「ど、どうかお助けください!」
ジャミルからテシアが処分を決めると聞いていた若い山賊たちはテシアに向かって頭を下げて助命を懇願した。
「口減らしとはどういうことですか?」
「ジャミル卿は御貴族出身ですか?」
「卿などとお呼びになるのはやめてください。私は田舎領主の五男坊でした。貴族とも呼べるか怪しい家でしたよ」
「ではジャミルさんと。五男坊……少しは彼らの気持ちも分かるかもしれないね」
テシアは若い山賊たちの境遇を押しはかる。
「どこの村でも人手は不足しがちだ。だから多くの子供を産んで小さい頃から手伝わせてそれをカバーする。しかし子供が大きくなって家を継ぐようになると家を継げない子供たちは出ていくしかなくなるのさ」
産んだ子供たち全員が満足に生きていけるような大きさの畑など基本的にはありはしない。
そうするとある程度大きくなった子供は村を出て仕事を探さねばならないのだ。
「多少事情は違うけれど御貴族の家でも同じ。当主になれるのは長兄で他の兄弟は家を手伝うか、出て行って自ら身を立てるかだ」
「それならなんとなく話は分かります」
ジャミルも傭兵なんて仕事をやっているのだ。
家から飛び出していかねばならない気持ちがいくらか理解はできた。
この若い山賊たちも望んで山賊をやっているようには見えない。
おそらく近くの村かなんかから出てきたはいいが仕事も見つからず、仕方なく山賊に身を寄せたのだ。
山賊としては子供でもなんでも言うことを聞くのは都合がよかった。
人が増えて雑用なんかも多くなったのでそうしたことを押し付けられる相手として受け入れたのである。
まともに剣も握ったことがない雑用の少年たちということだ。
そう説明されると若い山賊たちに同情するような気持ちも出てくる。
だからといってどうするのだとジャミルは思う。
数人とはいえ人は人。
容易く養えるものでもない。
傭兵にしようにも体つきは細く、とてもじゃないが腕っ節で生きていけそうにも見えない。
「顔を上げるんだ」
テシアは膝をついて若い山賊たちと視線の高さを合わせる。
「君たちの境遇は理解する。君たちにはまだやり直すチャンスがある。僕が君たちに提案してあげられる選択肢は三つだ」
テシアは三本の指を立てた。
「一つ目はこのまま自由になるという選択肢。どこへでも行くといい。逃がしてあげよう」
一つ目は自由にするという選択肢。
山賊に所属をしていたがそれほど悪に手を染めていないのなら今ここで討伐してしまうこともない。
自力で生きていけると自信があるのだったらここで逃してもいい。
「二つ目は神に仕えるという選択肢。僕が責任を持って教会に君たちを紹介しよう。山賊という道を選んだことを悔い改めて、清く正しい道を行くんだ」
二つ目は神官として教会に身を寄せるという選択肢。
教会では孤児などを受け入れるシステムもあるし、真面目に神を信奉して生きるというのであれば神官として生きていくこともできる。
そのためにテシアはある程度の責任を負うつもりもある。
「そして三つ目の選択肢は商会の手伝いを僕が斡旋してあげるという選択肢だ」
「商会の手伝い……ですか?」
「そうだ。僕はビノシ商会ってところに知り合いがいてね。君たちが望むならそこで働けるようにしてあげる。ただしこちらも教会と同じように真剣に働かねばいけないけどね」
三つ目はビノシ商会で働くという選択肢。
ビノシ商会の本当の持ち主であるテシアが言えば若い山賊たちを雇うことなど難しいことではない。
もちろんこちらは慈善事業ではないので本気で働かねば厳しいが、やる気があるというのだとしたらまともに生きていくことができる。
もし何かやりたいことがあるのだとしたらお金を貯めて独立することだってできるだろう。
「僕が君たちにしてやれることはこれだけだ」
これだけというがその三つの選択肢だけでもかなり大きなものだとジャミルは思った。
なんのツテもなく腕っ節一つだったジャミルは戦うしか道がなかった。
けれどテシアのした提案は上手くやれればさらに将来の選択肢が広がるものまである。
教会に誘うのだって簡単なことでもない。
神官といえど人なので責任を負いたがらないような者も多くいる中で、テシアは自分で責任を負ってまで受け入れようとしている。
これが本当の聖職者というものなのかと感動を覚えずにはいられない。
「人生の選択は待ってくれない。今、決めるんだ」
どのような提案を選んでも彼らの選択を尊重しようとテシアは思っていた。
困ったように顔を見合わせる若い山賊たち。
「僕は……」
その中で1番年上に見える子が決心したような目をして口を開いた。
ーーーーー
「手間をかけてすまないね」
「いえ! こうしたこともまた黒いコインの貴人の行いなのだと私は感動しています!」
山賊の討伐が終わって討伐隊は町に戻ってきた。
一人だけ自由になるという選択をした子がいたけれどそれ以外の子たちは教会か商会かを選んだ。
テシアは早速連れ帰った子たちをビノシ商会に連れていった。
ジャミルからテシアが処分を決めると聞いていた若い山賊たちはテシアに向かって頭を下げて助命を懇願した。
「口減らしとはどういうことですか?」
「ジャミル卿は御貴族出身ですか?」
「卿などとお呼びになるのはやめてください。私は田舎領主の五男坊でした。貴族とも呼べるか怪しい家でしたよ」
「ではジャミルさんと。五男坊……少しは彼らの気持ちも分かるかもしれないね」
テシアは若い山賊たちの境遇を押しはかる。
「どこの村でも人手は不足しがちだ。だから多くの子供を産んで小さい頃から手伝わせてそれをカバーする。しかし子供が大きくなって家を継ぐようになると家を継げない子供たちは出ていくしかなくなるのさ」
産んだ子供たち全員が満足に生きていけるような大きさの畑など基本的にはありはしない。
そうするとある程度大きくなった子供は村を出て仕事を探さねばならないのだ。
「多少事情は違うけれど御貴族の家でも同じ。当主になれるのは長兄で他の兄弟は家を手伝うか、出て行って自ら身を立てるかだ」
「それならなんとなく話は分かります」
ジャミルも傭兵なんて仕事をやっているのだ。
家から飛び出していかねばならない気持ちがいくらか理解はできた。
この若い山賊たちも望んで山賊をやっているようには見えない。
おそらく近くの村かなんかから出てきたはいいが仕事も見つからず、仕方なく山賊に身を寄せたのだ。
山賊としては子供でもなんでも言うことを聞くのは都合がよかった。
人が増えて雑用なんかも多くなったのでそうしたことを押し付けられる相手として受け入れたのである。
まともに剣も握ったことがない雑用の少年たちということだ。
そう説明されると若い山賊たちに同情するような気持ちも出てくる。
だからといってどうするのだとジャミルは思う。
数人とはいえ人は人。
容易く養えるものでもない。
傭兵にしようにも体つきは細く、とてもじゃないが腕っ節で生きていけそうにも見えない。
「顔を上げるんだ」
テシアは膝をついて若い山賊たちと視線の高さを合わせる。
「君たちの境遇は理解する。君たちにはまだやり直すチャンスがある。僕が君たちに提案してあげられる選択肢は三つだ」
テシアは三本の指を立てた。
「一つ目はこのまま自由になるという選択肢。どこへでも行くといい。逃がしてあげよう」
一つ目は自由にするという選択肢。
山賊に所属をしていたがそれほど悪に手を染めていないのなら今ここで討伐してしまうこともない。
自力で生きていけると自信があるのだったらここで逃してもいい。
「二つ目は神に仕えるという選択肢。僕が責任を持って教会に君たちを紹介しよう。山賊という道を選んだことを悔い改めて、清く正しい道を行くんだ」
二つ目は神官として教会に身を寄せるという選択肢。
教会では孤児などを受け入れるシステムもあるし、真面目に神を信奉して生きるというのであれば神官として生きていくこともできる。
そのためにテシアはある程度の責任を負うつもりもある。
「そして三つ目の選択肢は商会の手伝いを僕が斡旋してあげるという選択肢だ」
「商会の手伝い……ですか?」
「そうだ。僕はビノシ商会ってところに知り合いがいてね。君たちが望むならそこで働けるようにしてあげる。ただしこちらも教会と同じように真剣に働かねばいけないけどね」
三つ目はビノシ商会で働くという選択肢。
ビノシ商会の本当の持ち主であるテシアが言えば若い山賊たちを雇うことなど難しいことではない。
もちろんこちらは慈善事業ではないので本気で働かねば厳しいが、やる気があるというのだとしたらまともに生きていくことができる。
もし何かやりたいことがあるのだとしたらお金を貯めて独立することだってできるだろう。
「僕が君たちにしてやれることはこれだけだ」
これだけというがその三つの選択肢だけでもかなり大きなものだとジャミルは思った。
なんのツテもなく腕っ節一つだったジャミルは戦うしか道がなかった。
けれどテシアのした提案は上手くやれればさらに将来の選択肢が広がるものまである。
教会に誘うのだって簡単なことでもない。
神官といえど人なので責任を負いたがらないような者も多くいる中で、テシアは自分で責任を負ってまで受け入れようとしている。
これが本当の聖職者というものなのかと感動を覚えずにはいられない。
「人生の選択は待ってくれない。今、決めるんだ」
どのような提案を選んでも彼らの選択を尊重しようとテシアは思っていた。
困ったように顔を見合わせる若い山賊たち。
「僕は……」
その中で1番年上に見える子が決心したような目をして口を開いた。
ーーーーー
「手間をかけてすまないね」
「いえ! こうしたこともまた黒いコインの貴人の行いなのだと私は感動しています!」
山賊の討伐が終わって討伐隊は町に戻ってきた。
一人だけ自由になるという選択をした子がいたけれどそれ以外の子たちは教会か商会かを選んだ。
テシアは早速連れ帰った子たちをビノシ商会に連れていった。