「今のところ将来の夢もやりたいことも特になくて進学してから考えるという生徒も多いです。だから三上、今はぼんやりしてても何も焦る必要はない。大丈夫だからな」
「はい」
「一緒にじっくり考えていこう。……お母さん、いくつか資料を見繕って本人にお渡ししておくので、ご家庭でもよく話し合ってみてください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。あ、あの、それと普段の学校生活はどうでしょう。この子、学校でのことは全く話してくれなくて……」
「ちょっとお母さん!」
「いいじゃない、こんな機会じゃなきゃ聞けないんだから」
「もうー……」
「ははっ、ご心配するお気持ちもよくわかります。でも普段から生活態度も良くて仲の良い生徒との笑顔がよく見られますよ」
お母さんがしつこく先生に学校でのことも聞くものだから、先生も困りながらも話し始めていつのまにかわたしの話で盛り上がる教室内。
ようやく面談が終わった頃には予定より大分時間がオーバーしてしまっていた。
今日はわたしが最後の面談でよかった。
後に待っている人がいたら申し訳なさすぎる。
「長居してしまって申し訳ありませんでした」
「いえ。ご心配は尽きないと思います。何かあったらいつでもご相談ください。三上もな。いつでも相談に乗るから。先生のこと頼ってくれていいからな」
「はい。ありがとうございます」
「娘のこと、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。今日はお越しいただきありがとうございました」
お母さんと二人で頭を下げて、教室を出る。