茶色のニットベストに赤茶のチェックのスカート、それから同じ色のリボン。
この辺りの高校の中では一番可愛いと評判の制服に身を包み、染めたことのない黒いロングヘアはいつもと同じポニーテールにした。
その状態で向かうのは学校、ではなく。
徒歩十秒ほどで辿り着く、お隣さん。
インターホンは鳴らさずにその門の前でスマートフォンを弄りながら"彼"が出てくるのを待つ。
しばらくして、ガチャリとドアが開く音と共に大きなあくびをする声が聞こえて、そちらをバッと振り向いた。
同じ学校の制服にさわやかな黒髪の彼が視界に入る。
向こうも同じだろう、「行ってきまーす」という気怠げな声から一転。
「……あ? てめぇ、またいんのかよ。ストーカー女が」
わたしを見つけた瞬間に一気に鋭くなった声に、射抜かれるように胸がキュッとなる。
この瞬間が、いつも苦しくてたまらない。
それでも、わたしは口角を上げて微笑んでみせた。