紫苑と透に背中を押されて走り出したものの、芽衣がどこにいるかなんてはっきりとはわからなかった。
花火はもうすでに上がり始めていて、ドンという音と共に辺りが明るくなったり暗くなったりで視界が安定しない。皆その場で足を止めて空を見つめたりスマートフォンのカメラを構えたりしている。
そんな花火には目もくれずに真っ直ぐ走っているのは多分俺だけで。
芽衣、芽衣。今まで本当にごめん。すぐに行くから。
だから頼む。
もう少しだけ、そこにいてくれ。どうしても今聞いてもらいたいことがあるんだ。
汗を滲ませながらもとにかく前に進む。
しかし芽衣がいるのは町外れの高台ということしか知らない。それがどこなのか、二年前のあの日にちゃんと芽衣に聞いておくべきだった。
ひとまず俺と芽衣が事故にあったコンビニの前を目指して走った。
その途中、
「兄ちゃん!」
龍雅の声が聞こえて思わず足を止める。
「兄ちゃん、どこ行くんだよ」
「龍雅……」
龍雅に殴られて以来、まともに顔を合わせていなかった俺たち。
数日ぶりの龍雅は、泣いたのか少し目が赤くなっていた。