「改めてご紹介しましょう。こちらは瑞穂之国の親王殿下で、私の上司、特命全権大使でいらっしゃいます」
 静穂は驚いて彼を見た。

 親王殿下ということは、帝の息子ということにならないか。

「初めまして」
 慌てて挨拶する。

「初めてではないがな」
 ククク、と彼は笑いを漏らす。

「え?」
「すでに雷獣の姿で会っている」

「じゃ、デンカって」
 雷刀を見ると、彼はうなずいた。

「雷獣って人間の姿になれるんですね」
「力のあるものは、です。私も雷獣なのですよ」
 確かに雷を使っていた、と静穂は思い出す。

「あのとき殿下とお呼びしてしまったので、名前のふりをしたのですよ」
「雷獣であることが秘密だったわけではないですよね?」
 秘密だったら、今、正体を暴露するわけがない。

「殿下があの程度の者に捕まりそうになったことを隠したかったのですが、正体を明かしてあなたを驚かせたい、とおっしゃって」

 確かに驚いたが、そんなことで正体を明かすものなのか、とそこに唖然とした。

「雷獣の姿でひなたぼっこをしていたらうとうとしてしまったのだ。雑魚と間違われて捕まった。雑魚に雑魚扱いされるとは屈辱だ」
 デンカは渋面を作った。

 雷獣ってけっこうドジだな、と静穂は改めて思った。

「我を式神にしようとしたらしいが、あいつ程度で我を抑えられるわけがない。とはいえ、力の一部を封印されていたからな、一時撤退した」

「そこを私が保護したのです。忙しい合間を縫って」
 恨みがましく雷刀がデンカを見る。
 デンカはすました顔でお茶をすすった。

「その上、彼女との話を邪魔されて」
「お前たちの初対面を見守ってやろうと思ってな。面白そうだったから、混ざらせてもらったぞ」
 ククク、とデンカがまた笑う。

「覗きの上に野次馬って」
 静穂はあきれた。王族って、もっと高貴な感じを想像していたのに、なにかが違う。