風磨はばっと振り返った。
 敵に隙を見せまくりじゃん!
 静穂はあっけにとられた。

「そんなに必死に俺を止めるなんて……俺のことが好きなのか?」
「は?」
 静穂は口をあんぐりとあけた。

 なぜそんなありえない妄想……じゃない、発想になるのか。

 が、止めるにはその勘違いを利用したほうがいいかもしれない。

 静穂はがんばって目をうるうるさせ、両手を胸の前で組んで彼を見た。

「どうかお願い、戦いなんてやめてほしいの」
 曲がりなりにも自分を助けようとしてくれた人だ。怪我をするさまを見たくない。

「そうか、それほど」
 風磨は感動したように天を仰いだ。

「君のためにも、あの男は倒さなければならない」

 まさかの逆効果!
 静穂は慌てた。

「あなたたち」
 雷刀の声がした。怒りのこもった低音に、静穂はひきつった。

「なんですか、その茶番は」
「茶番とはなんだ! 彼女の告白を愚弄するなど無礼千万!」

「してない! 告白してない!」
 静穂は必死に手を振って否定する。

「安心しろ。俺は、君が守る!」

 風磨の叫びに、全員の動きが止まった。
 全員が風磨を見つめる。

 最初に我に返ったのは雷刀だった。
「誰が誰を守る、と?」
 雷刀がつっこむ。

「へ?」
 風磨は間抜けな声をあげた。

「俺は君が……あれ? 俺を君が? 君と俺が……」

 風磨はキリッと顔を整え、雷刀を指差す。
「君は俺が守る!」

 あやかしが全員困惑し、雷刀と風磨を交互に見る。