「さあ、このあとどうする?」
「どうしたらいいかわかんない」
 牢の中で困惑して座り込む。

「雷刀の忠告を聞いていたら、こんなことにはなるまいに」
 ククク、とデンカは笑う。

 静穂は言い返せなくて黙る。

「ときおり人間があやかしを(さら)っていくからな。人間というだけであやしまれるのは仕方ない」
「さっきも誰かが言ってたけど、どうして人があやかしを? あやかしのほうが強いよね?」

「人間にもあやかしより強いものがいる。退魔師と言ったか」
「そういえば」
 両親は普通だったから忘れがちだ。

「そういう者たちがあやかしをとらえ、使役したり見世物用に売ったりする。だから人はあやかしに嫌われている」
「なんかごめん」

「お前がやったわけではないのに。おかしなやつだな」
「だって……」
 同じ『人間』として、なんだか申し訳なかったから。

「ふむ。あやつがお前にこだわるのも、少しわかる気がするな」
 デンカが言い、静穂は首を傾げた。

「なんのこと?」
「そのうちわかる」
 デンカはまた、ククク、と笑った。

「意地悪」
 雷刀に保護される程度には彼だってドジだったくせに。

 そう思って、気が付く。
「外交官特権って、きいたことある。なにやっても捕まらないって。妻にもあるのかな」
「外交官特権はお前の世界の制度だ。あったところでここは雷刀の生国、つまりは自国だ。特権などあるわけなかろう」

「そっか」
 静穂は肩を落とした。

「このあと、きつい折檻とともに吟味方(ぎんみがた)の取り調べが始まるぞ。耐えられるかな」
 からかうようにデンカが言う。