「少しだけ一緒に歩きましょう。話はその後です」

「はい」
 静穂は答えた。

 初めての街に、わくわくする気持ちは抑えられなかった。



 雷刀に手をつながれたまま歩いた。

 男性と手をつないで歩くなんて初めてで、静穂の鼓動は鎮まることがなかった。

 街はのんびりとした空気が流れていて、あやかしたちが笑いあいながら通り過ぎていく。

 古びた木の壁の家々が並び、重々しい瓦屋根には猫が寝転がっていた。

 古めかしい漢字の看板や、絵を使った看板もあった。

 弓矢が描かれた看板があった、なにかと思ったら、実際に弓矢を射ることができるお店だった。的に当たった位置で景品がもらえるという。

 興味津々に見ていたら、雷刀が苦笑した。

「やってみますか?」
「いいの!?」
 静穂は目を輝かせた。

 店内に入り、雷刀が料金を払う。
 弓矢を渡され、雷刀に教えてもらいながら矢をつがえる。

 手を離すと、矢は力なく飛んで地面に落ちた。
 渡された五本の矢は、すべて的に当たらなかった。

「ぜんぜんダメ……」
 自分の才能のなさにがっかりした。

 デンカには弓矢は大きすぎて、挑戦すらできなかった。

「この体じゃなければな」
 ちょっと悔しそうにデンカがつぶやく。

「お前もやってみせろ」
 デンカに言われて、雷刀も挑戦した。

 雷刀はとんでもなくうまくて、全部真ん中に命中していた。

「大当たりぃ!」
 店主はどんどんと小太鼓を叩いた。居合わせた客が拍手で雷刀を褒めた。

「すごいですね!」
 静穂もまた拍手しながら雷刀に言う。

「造作もないですよ」
 雷刀が微笑む。その笑顔が眩しくて、静穂はまた目をそらしてしまった。

 景品はいくつかの中から選ぶことができた。