晴天の霹靂だった。
霹靂なんていう言葉、これ以外で使ったことないな、と静穂は頭の隅で思った。急な雷のことなんだから、霹靂は雷の意味だよね、と今更ながらに考える。
眼の前には、黒とみまがうような紫の髪の、美しい男。金色がかった紫の瞳がきらめく。細身の体にスーツを纏い、整った顔立ちをきりりと引き締めている。
人ならざる色を持った彼は雷を使うことのできるあやかしで、書類上は自分の夫だった。日本の書類上では、詩洲雷刀という名前で二十七歳。自分の七歳上だ。本名は知らない。
彼はあやかしの国と日本との外交を担うあやかし側の外交官だった。
婚約中も結婚してからも一度も会ったことはなかった。
その彼が、初めて会うなり玲瓏な声で言ったのだ。
「離婚しましょう」
と。
静穂には青空に突如として轟いた雷鳴も同然だった。
「……どうして」
かろうじて絞り出した声は、かすれていた。
「あなた、花帆さんではありませんよね」
ばれてるー!
静穂の顔がひきつった。