一週間後、耀斗は珠夏をドライブに連れ出した。
連れて行かれたのは、初デートに行った芝桜のきれいな公園だった。
彼はまたその公園を貸し切りにしてくれて、珠夏とともに歩く。
「見頃には少々早かったな」
まだ緑の多い斜面を見て、彼はつぶやく。地表を這うようにして伸びたそれらは、まだらに花を咲かせていた。
「でも、あちらはきれいに咲いています」
珠夏が言うと、耀斗は優しく微笑した。
早咲きの品種が咲きこぼれる場所にはベンチがあり、耀斗は珠夏をそこに座らせた。
珠夏が彼を見上げると、彼は立ったまままっすぐに珠夏を見つめた。
「まずは謝罪を。俺の管理が甘く、あなたに迷惑をかけてしまった。申し訳ない」
耀斗が頭を下げるので、珠夏は慌てて立ち上がった。
「やめてください、そんなの」
止めるが、彼は頭を上げない。だから、珠夏は付け足した。
「許します、だからやめてください」
珠夏がそう言うと、ようやく耀斗は顔を上げた。
「私こそ、ショーを台無しにしてしまって……」
「あなたのせいではない」
耀斗は珠夏を座らせ、自身も隣に掛けた。
「あれに関しては、麒麟の当主が骨を折ってくれてね。穏便に片がつきそうだ」
「麒麟の方が」
五神の最高位の口添えがあれば、逆らう者はいないだろう。
「ショーの最中に原因不明の火災が発生し、避難させた。表向きはそう処理することになった」
「原因不明って……」
実際には紅羽のせいだ。大きな火災にはならなかったが、備品など焦げたものはたくさんあっただろう。
「でなければまた両一族の確執が深まってしまう。当人同士が和解していても、火種を欲しがる人はいくらでもいるからね」
「……はい」
「あなたもこのことは口外しないで。」
「わかりました」
珠夏はうなずいた。
「まさか麒堂家の娘が窃盗の暴挙に出るとは思わなかったけどね」
苦笑する耀斗に、珠夏は驚いた。