体が熱い。燃えるようだ。

 視界が真っ赤に染まる。

 直後、体が軽くなった。

 ふわりと浮き上がるようだった。

 動ける。

 彼女は腕を――今や翼となったそれを動かした。

 さらに動かすと、翼が風を起こした。

 彼女は高く舞い上がる。

***

「朱雀だ」
 耀斗は愕然とつぶやいた。

 今、彼の目の前で珠夏が朱雀へと変化した。

 五色の長い尾羽をたなびかせ、翼から炎を発しながら上空に舞い上がった。

 かと思うと急降下して鷹となっている紅羽の前に立ちはだかる。

「珠夏!?」
 紅羽は驚きの声を上げた。

 朱雀は全身を炎に包まれていた。だが、自身から発せられたそれはその身を焼くことがない。

「もうやめて」
 珠夏の声に、紅羽は抗議する。

「あいつはあなたを傷付けたのよ!」
「違う。私が選んだことなの」
 珠夏は答える。

「猫に襲われたのは迂闊に変化をした私の行動の結果。耀斗さんとの結婚を選んだのも、なにもかも全部、私。誰かのせいじゃない。だから、もう自分を責めるのはやめて」
 珠夏の言葉に、紅羽は怯む。

「だけど、珠夏……」
「私ももう大人なのよ。私がやったことは自分で責任をとるべきなのよ」

「珠夏は大事な私の妹なのよ!」
「わかってる。お姉ちゃんも、私の大事なお姉ちゃんなの。だから、耀斗さんを傷付けないで。私を信じて」

「珠夏……」
「私がちゃんと決着をつけるから」
 珠夏が言い募る。