***

 その姿を見て、耀斗は驚愕した。

 亮太が珠夏を拘束して現れた。

 これでは火に油だ。

「今すぐ変化を解け! こいつがどうなってもいいのか!」
 亮太が叫ぶ。

「やめろ、彼女を離して退()け!」
 耀斗は亮太に叫ぶ。が、亮太は離さない。珠夏は白虎となっている耀斗を見て恐怖に顔をひきつらせている。

「よくも珠夏を!」
 紅羽は嘴から大量の炎を吐いた。

 とっさによけた耀斗だが、炎が尻尾を焦がした。

「耀斗様!」
 亮太が叫ぶ。

「命令だ! 珠夏さんを離せ!」
 亮太はしぶしぶと言った様子で珠夏を離した。

 紅羽はすぐさま変化を解いた。

 珠夏に駆け付け、抱きしめる。

 耀斗はほっとしてその様子を見ていた。

「ひどい目に遭ったわね。もう大丈夫よ」
 紅羽は優しく珠夏の髪を撫でる。

「家に帰りたい」
 珠夏は涙声で姉に訴えた。

「もちろん、帰るわ。その前に」
 紅羽の目が凄みを帯びて黎羅をとらえた。

 まずい。
 耀斗は黎羅の前に飛び出す。

「やはりかばうのか!」
 紅羽が再び鷹に変化した。

***

「待って!」
 珠夏は紅羽に手を伸ばした。

 だが、高々と舞い上がった彼女に声も手も届かない。