***

 亮太は二人の戦いを見て顔をひきつらせた。
 耀斗が必死に準備をしてきたショーが台無しだ。

 これだから朱雀は。
 彼はぎりっと歯を食いしばって紅羽をにらんだ。

 自身も変化できたなら、必ずや仕留めてやったものを。

 耀斗は周囲を気遣いながら戦っているので防戦一方だ。なのに朱雀のあの女はなんの配慮もない。

 思ってから、亮太は気が付いた。

 朱雀の女はもう一人いた。
 あいつを人質にすれば鷹をおとなしくさせることができるはずだ。

 亮太は急いで駆け出した。

***

 黎羅は唖然として二人の戦いを見つめていた。

 変化した者同士が戦うのを見るのは初めてだった。

 麒麟の一族はみな穏やかで、戦うことを知らない。

「なんでこんなことに」
 すがるように桜の木に寄った。そのまま力なく根元に座り込む。

 黎羅はただ、愛する人を手に入れたかっただけだ。

 一族の会合で見たときから好きだった。

 彼はいつも優しくて、惹かれる一方だった。

 結婚していると知ったのは、彼の式の直前だった。

 政略結婚だと聞いていたから、自分が愛をもってねじ込めば彼の心を手に入れられると思った。

 それが、こんなことになるなんて。

 目の隅に動くものがあった。

 そちらを見ると、亮太が抵抗する珠夏をひきずって来るところだった。