「お前が犯人か!」
「違います!」
 珠夏は慌てて否定した。

「盗んでおいて直前で届ける……どういうつもりだ」
「私はなにも知りません!」

 亮太はそばに居た人に着物を渡し、珠夏の腕をつかんだ。

「若様に恩を売って朱雀の地位を上げるつもりか」
「違います!」
 そんなこと、考えたこともなかった。

「詳しく聞く必要があるな」
 ぎらつく目でにらまれ、珠夏は怯えた。



 珠夏は城の奥深くに連れて行かれた。
 再現された城であり、構造は本物のそれとは違う。

 展示用に牢を模した部屋があり、珠夏はそこに閉じ込められた。

「今は忙しい。詮議はあとだ。おとなしく待っていろ!」
 バタン、と格子扉が閉じられ、鍵が掛けられた。

「待って!」
 格子扉を押すが、まったく開かない。

 珠夏はどんどんと格子を叩いた。
「開けてください! ここから出して!」

 亮太の姿はすぐに見えなくなった。
 どれだけ叫んでも人は来ず、手が痛くなって諦めた。

 また閉じ込められた。
 珠夏はため息をついた。

 部屋は狭くて、明り取りの小さな窓が天井近くについていた。それだけでは暗いので、天井にはライトもついている。

 出入りできるのは、やはり目の前の扉しかないようだ。

 部屋には『呉服 虎守』と書かれた段ボールがいくつかあった。荷物置き場として利用していて、だから彼は鍵を持っていたのだろう。

 日が入らないここは、春とは言え肌寒く感じた。

 どうしてこんなことになるのだろう。

 あなたは反省する必要があるな。
 初めに閉じ込められたときの耀斗の声が蘇る。