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 実家に帰った翌日、珠夏は自分あての宅配を受け取った。
 広い和室に行き、畳の上でその箱を開ける。

 二つに折り畳んで入れられたたとう()が見えた。

 これは、と驚いて広げる。
 耀斗の部屋にかけられていた白無垢だった。

「どうしてこれがここに」
 展示会で使う、と言っていたのに。

 メッセージもなにもなくて、どういう意図で送られたのか、まったくわからない。

 珠夏は呆然としたのち、スマホを手に取った。
 耀斗の会社の名前を打ち込む。

 すぐにサイトが表示された。
 展示会の情報を確認する。

 展示会は午前十時から、ファッションショーは今日の午後二時からとなっていた。

 ばっと時計を見ると、ちょうど十二時になったところだった。

「珠夏様、お食事の準備が整いました」
 女中が呼びに来る。

「あとで! 今は急ぐの!」
 珠夏は手早く着物を折りたたみ、たとう紙に包む。

 すぐに身支度を整え、焔宮家のおかかえ運転手に車を出してもらった。
 ファッションショーの開始まで、車で行けばぎりぎり間に合う。

 耀斗に電話をしようかと迷ったが、結局、やめた。
 展示会場に着いたら誰かに渡して、すぐに帰ろう。

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 食堂で珠夏を待っていた紅羽は、女中の報告に首をかしげた。

「急用で出掛けたの? どんな?」
「内容はおっしゃいませんでした。ひどく慌てておいででした」

 紅羽はテーブルをとんとんと指で叩いた。

 そこには離婚届が置いてあった。

 今日、珠夏に書かせるつもりだった。証人の欄は自分と夫で埋めてある。