口さがない女中が耀斗と黎羅の仲を邪推するのもうっとうしかった。が、珠夏と同居し、黎羅が大学を卒業してしまえばそれも止むだろうと判断した。

 珠夏はすでに自分の妻だ。式のあとにはやっと一緒に暮らせる。

 耀斗の胸は高鳴っていた。
 式の前、ようやく久しぶりに珠夏に会えた。

 あまりのかわいさに、思わずつぶやいた。
「かわいいね……食べちゃいたい」
 彼女が照れて震えるのが、またかわいかった。

 その晩、彼女が熱を出した。
 お見舞いに顔を出した耀斗は、彼女が暴れて彼を拒否するので驚愕した。

 それほどまでに、嫌悪していたのか。
 うつむいて震えたのは照れたのではなかったのだ。

 気が付いて、耀斗は彼女に顔を見せなくなった。

 彼女をつなぎとめたい気持ちと自由にさせてあげたい葛藤に揺れた。

 彼女が離婚を言い出したときにはただただ驚いた。

 女中がなにか吹き込んだのかと思ったが、彼女は自分の判断だと主張した。

 逃がしたくない。
 とっさに思ったのはそれだった。

 つい、彼女を部屋に閉じ込めてしまった。
 珠夏を手元に置きたくて彼が用意した部屋だった。

 逃げられないように窓をなくし、中からは開けられない。
 使う予定はなかった。まさか使うことになるとは思いもしなかった。

 彼女とゆっくり話せばわかってもらえる。
 勝手な期待だということはわかっていた。

 監禁などしたらむしろ彼女は自分を嫌うだろう。
 それでも、気持ちを抑えることはできなかった。

 一生閉じ込めることになったのだとしても、絶対に彼女を手放したくない。
 耀斗は珠夏を思い、青い空に目を細めた。



 自宅に帰った彼は、真っ先に珠夏を閉じ込めた部屋に向かった。鍵を開けようとして、違和に気付く。

 鍵が開いている?
 嫌な予感とともに扉を開ける。