私には難しすぎることばかりだ。

「私は、陽斗のことも、見つけた感情も忘れたくない。だけど、約束できないよ…」

「じゃあそれでもいい。今、叶笑の気持ちは聞けたから、俺はもう満足だ」

なんでそんなふうに笑えるの?

もう、俺には心残りはありませんって顔しないでよ。

「嫌だ。嫌だっ!!死なないでよっ!忘れたくないよっ!こんなにも大好きなのにっ…」

その時、私は陽斗に抱きしめられた。

それはとても弱くて優しいハグだったけれど、今、確かに私は彼の体温を感じている。

また、涙が溢れ出した。

「あはは、もう、叶笑って本当に泣き虫だなぁ」

ばか。そう言うあなただって泣いてるじゃんか。

二人でお互いの涙を優しく手で拭う。

この時間はとても暖かくて、愛おしかった。

そんな幸せな時間が、まだ続くと思ってた。

痩せているだけで他は特になんともなさそうな陽斗だったし、こんな早いとは思ってなかった。


それは、このあとすぐのこと。

私が彼に隠していたことを告げようとした時、突如彼は苦しそうに肩で息をし始めた。

「陽斗っ?陽斗!!大丈夫?痛いの?苦しいの?」

そう私が問いかけて帰ってきた言葉は陽斗の謝罪だった。

「叶笑……っごめん」

「え、何が?」

「色々……本当は、こんな…っ情けない姿、見せたく…なかった。…俺なんかが、君と…付き合っちゃだめ、だったんだ」

「何バカなこと言ってるの。私の方こそごめんだよ。元はと言えば、私がみんなを巻き込んでる」

本当に、私は何をやっているんだ。

関係のない人まで、大切な人まで巻き込んでしまった。

どこか光を失ったかのように虚な陽斗の瞳が私を捉える。

「好きだよ…今でも。大好きだ」

「うん。私も、ずっとずっと、陽斗のことが好きだからっ」

かすかに口角をあげて微笑む彼の手を、私はしっかりと握る。

私はここにいるよって、少しでも伝えたくて、私は必死だった。

ここで頭に浮かんできたのは岩下さんだった。

陽斗に許可をもらって、彼のスマホから岩下さんに急いで電話をかける。

「もしもし?」

「お願い。早くきて!陽斗が、苦しそうで…」

私がここまで言えば何かを察したのか、「急いで行くから待ってて」と言って岩下さんは電話を切った。