「え、約束ですか?」
「そう、約束。大事な人と前に約束をしたんだ」
「それは、どんな?」
「いつも笑って誰かのことも笑顔にする。誰かの光になる。そう言う約束だよ」
そう、この約束は亡き母としたものだ。母は交通事故で死んだ。と言っても、相手側の信号無視に巻き込まれてしまっただけだ。
幸い、運ばれてきた時は意識はあったけど容体が急変し、俺が駆けつけてから二十分で息を引き取った。
しかも、相手側も一週間ほどで一度も目覚めることなく息を引き取ったらしい。憎むべき相手もいなくなり、父も変わったと思う。
以前よりも大人しくなった。会話をしなくなった。家事は分担しているものの、父はずっとどこか虚げだ。
会社では仕事はできているらしいけど、家ではぼーっとして新聞を読んだりテレビを見たり。
母が死んだ時、俺はまだ五歳だったから父も大変だったと思う。中学の部活も入るか入らないか相当迷った。
相談すると父は、やりたいことはやれと言ってくれたから今、俺はハンドボール部で活動できている。
「大体は話終わったかな。聞いてくれてありがとうね」
「いえ……悲しいことがあっても、陽斗さんは約束を守っているんですね。すごいと思います。私だったら絶対に疲れます」
「そうだね、確かに疲れはしたよ。それでも、この言葉が母の生き方を示しているみたいで簡単にはやめられないんだ」
俺が五歳の時に亡くなった母の記憶はほとんど無い。ただぼんやりと、よく笑う人だったことだけは覚えている。
だから、ほとんど覚えていない母のことを知る鍵になるのが約束だと俺は思っている。
「あの時涙を流していたのは、もう、優等生でいる意味がわからなくなってきたから?約束を守れていない気がして悔しかたから?」
「ごめん、今は言えない。ここからは二つ目になっちゃうから」
嘘だ。そんなの嘘だ。ただ、こんなに弱い自分を知られたくなかっただけ。
そう、最近思い出した夢に縋っているなんてことは口が裂けてもしばらく言えないだろう。
ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー
土曜日も俺たちハンドボール部は活動する。今から練習試合なのだ。
「なぁ〜、陽斗!今日、俺の体調があんまよく無いから試合できないかも」
「わかった。無理はしないほうがいいから少し離れたところで声出しでもしといてくれたら嬉しい」
「サンキュ!」
練習試合は強豪校相手。再来週の試合に向けてのお手並み拝見と言うやつだ。まさかの岩下が試合に出られないのは痛手だ。
彼は結構強かった。
「そういえば、陽斗水筒忘れただろ?大丈夫か?」
そう、今日俺は水筒を忘れてしまった。蛇口から飲めるものの、わざわざ校内に戻らなければいけないのはめんどくさい。
「大丈夫だけど、正直めんどくさいかな」
「お前こそ無理はすんなよ」
「ありがとう」
試合開始早々に点を取られまくった。六点差くらいで負けている。そのまま休憩に入った。早く水分補給をしなければいけない。
走って汗だくのまま校内に戻る。
「え?叶笑さん?なんで?」
最初は俺の意識が飛んだかと思った。情報部は基本、土曜に部活がないからだ。
でも、一ヶ月に一度くらい活動することをすぐに思い出した。
「そう、約束。大事な人と前に約束をしたんだ」
「それは、どんな?」
「いつも笑って誰かのことも笑顔にする。誰かの光になる。そう言う約束だよ」
そう、この約束は亡き母としたものだ。母は交通事故で死んだ。と言っても、相手側の信号無視に巻き込まれてしまっただけだ。
幸い、運ばれてきた時は意識はあったけど容体が急変し、俺が駆けつけてから二十分で息を引き取った。
しかも、相手側も一週間ほどで一度も目覚めることなく息を引き取ったらしい。憎むべき相手もいなくなり、父も変わったと思う。
以前よりも大人しくなった。会話をしなくなった。家事は分担しているものの、父はずっとどこか虚げだ。
会社では仕事はできているらしいけど、家ではぼーっとして新聞を読んだりテレビを見たり。
母が死んだ時、俺はまだ五歳だったから父も大変だったと思う。中学の部活も入るか入らないか相当迷った。
相談すると父は、やりたいことはやれと言ってくれたから今、俺はハンドボール部で活動できている。
「大体は話終わったかな。聞いてくれてありがとうね」
「いえ……悲しいことがあっても、陽斗さんは約束を守っているんですね。すごいと思います。私だったら絶対に疲れます」
「そうだね、確かに疲れはしたよ。それでも、この言葉が母の生き方を示しているみたいで簡単にはやめられないんだ」
俺が五歳の時に亡くなった母の記憶はほとんど無い。ただぼんやりと、よく笑う人だったことだけは覚えている。
だから、ほとんど覚えていない母のことを知る鍵になるのが約束だと俺は思っている。
「あの時涙を流していたのは、もう、優等生でいる意味がわからなくなってきたから?約束を守れていない気がして悔しかたから?」
「ごめん、今は言えない。ここからは二つ目になっちゃうから」
嘘だ。そんなの嘘だ。ただ、こんなに弱い自分を知られたくなかっただけ。
そう、最近思い出した夢に縋っているなんてことは口が裂けてもしばらく言えないだろう。
ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー。ーー
土曜日も俺たちハンドボール部は活動する。今から練習試合なのだ。
「なぁ〜、陽斗!今日、俺の体調があんまよく無いから試合できないかも」
「わかった。無理はしないほうがいいから少し離れたところで声出しでもしといてくれたら嬉しい」
「サンキュ!」
練習試合は強豪校相手。再来週の試合に向けてのお手並み拝見と言うやつだ。まさかの岩下が試合に出られないのは痛手だ。
彼は結構強かった。
「そういえば、陽斗水筒忘れただろ?大丈夫か?」
そう、今日俺は水筒を忘れてしまった。蛇口から飲めるものの、わざわざ校内に戻らなければいけないのはめんどくさい。
「大丈夫だけど、正直めんどくさいかな」
「お前こそ無理はすんなよ」
「ありがとう」
試合開始早々に点を取られまくった。六点差くらいで負けている。そのまま休憩に入った。早く水分補給をしなければいけない。
走って汗だくのまま校内に戻る。
「え?叶笑さん?なんで?」
最初は俺の意識が飛んだかと思った。情報部は基本、土曜に部活がないからだ。
でも、一ヶ月に一度くらい活動することをすぐに思い出した。