太陽になりたかった





   〜叶笑side〜




 何にもやることがない。正直言って、とても暇だ。

窓からの同じ景色はもう見飽きたし、毎日話し相手がいるわけでもないから退屈だ。

外の白い景色を見れば昨日のことのように思い出される、あの謎の夢。

いや、夢じゃなくて現実だったかもしれない。

あの空間が現実だって言うのも難しいけれど、とにかく、夢でもなく現実でもない世界。

またあの空間に行ってみたい。だけど、どれだけそう願ってもあの空間に行くことは出来なかった。

私の記憶は、今は何かを忘れることもなく過ごせている。

今までに無くしたものは大きいけれど、きっと、まだ忘れていない思い出の方が多いはず。

本当なら、出来るなら忘れたくない。

ずっと覚えていたいし、陽斗と一緒に生きたかった。

そう思っていた時、ドアが二回ほどノックされた。

この時間ならもしかしたら看護師さんかもしれない。

だけど、いつもはもう少し遅いのになぁ、と口には出さずに考えていた私はとりあえず返事をする。

返事をした後に入ってきたのは、看護師さんではなく岩下さんだった。

それも、なぜか慌てた様子で私のところまでやってきた。

もしかして陽斗に何かあったのだろうか。

「あれ、どうしたの?そんなに慌てて」

「叶笑さん、陽斗が、前にあなたの亡霊のような人が出てくる夢を見たって話をしたのは覚えてるよね?」

「え、うん。覚えてるよ?」

私は少し前まで、陽斗の亡霊を名乗る人が出てくる夢を見ていた。

もしかしたら、と思って岩下さんに陽斗にも聞いてみてくれないか頼んだ。

「あの話をした後に、陽斗はなぜか俺に頼んだんだ。叶笑さんを連れてくるように」

え、私を?呼んだの?彼が?

「理由はわからないけど、医師から許可はもらった。今から陽斗の病室まで一緒に来てほしい」

「私なんかが行ってもいいの?」

「叶笑さんが行くべきです。行かなくちゃいけないっ。だって、陽斗が…!」

そこまで岩下さんに話されてようやく今の状況を理解した。

私の嫌な予感は当たってしまったんだ。

「分かった、ありがとう。すぐ行く!」

「叶笑さんに頼まれた通りに、あのことは陽斗には隠しておいたから、あなたの口から早いうちに言ってあげてください」

「うん。隠す意味なかったかもしれないけど、今から話そうと思う」

ある決意を胸に、私は愛する彼の病室へと足を進める。