「それで?何を俺に確認したいの?」
「陽斗って、夢かなんかに叶笑さんの姿の…幽霊みたいなやつ、見たことある?」
「え?あるけど…それがどうかしたのか?……まさか、岩下もその夢を見てるのか?」
「ううん。俺は見てない」
じゃあ、一体どこでそんな…俺が見たあの謎の空間と亡霊さんのことを知ったんだ?
「実は、叶笑さんが、陽斗の亡霊と名乗る人が出てくる夢を何度も見てるらしくて…」
え?叶笑が?俺の亡霊と名乗る人物を、夢で、しかも何回も見たのか?
「それ、本当?」
「うん。本当だよ?叶笑さんがもしかしたらって思って、俺に陽斗に直接聞くように頼んだんだ」
俺の夢には叶笑の亡霊が、彼女の夢には俺の亡霊が出てくる…ということは、何かしら今後のことを話しているに違いない。
俺の体調は悪くなっているから死ぬことは間違いない。
ただ、叶笑がもしも自分が死ぬからってその亡霊さんに言っていたらどうなるのか分からない。
「岩下、頼みたいことがあるんだ。できるだけ早く、叶笑をここに連れてきてほしい」
「え?別に俺は良いけど、許可をもらってからじゃないと難しいと思う。だから…許可をもらえ次第、まずは陽斗のところに行くから待っててよ」
「ありがとう。本当に、いつもありがとう」
「へへっ、こんなの、全然大したことないってさ!」
そう言って顔を輝かせた彼は、ここに入ってきた時よりも軽そうな足取りで病室を後にした。
そしてその二日後、俺の容体が急変した。
あの日の翌日はそれまでよりも痛みが落ち着き、比較的過ごしやすい生活を送れていた。
それなのに、今日、今までにないくらいの痛みが襲いかかってきている。
今日は月曜日で、岩下は学校に行っていたはずなのに、俺の容体を聞いたからか授業を抜けてまで駆けつけてきてくれた。
今も隣で、ずっと心配そうな顔をしている。
「陽斗…俺があの日、無理をさせたんだよな…あの時、俺が陽斗に会いに行かなければ、こんなに苦しむことはなかったはずなのに…」
「岩下、それは、言うなよ。俺はあの時、お前が来てくれて嬉しかった」
「それにおれ、まだ、叶笑さんを陽斗に会わせられるかの許可取れてないんだよ?最低だ…俺、すごく最低だ」
今にも泣きそうなその瞳が、キラキラと揺らいでいて綺麗だと、俺は思った。