彼のいない世界で生きていくのは退屈で、寂しくて、悲しいと思う。
絶望の淵に立って、何度も崖から落ちそうになってしまうこともあるんだろう。
それでも、私は何を望む?
「何か少しでも楽しみがあるのなら、無理に死のうとしなくてもいいと思います。些細な喜びでも感じられるのなら、まだまだ生きがいがあるとは思いませんか?」
そう言って、今までほとんど真顔だった亡霊さんが初めて笑った。
その笑顔は、私が今まで目にしてきた陽斗の笑い方とは少し違った。
「そっか…亡霊さん、どうもありがとう!」
きっと、この亡霊さんも昔に色々あったんだろうな。
毎回毎回亡霊、となってたくさんの人の相手をして、昔の記憶なんかほとんどないんだろう。
亡霊さんの人間だった頃の姿をみてみたかったなぁ。
徐々にフェードアウトしていく視界の中で、密かにそう思った私の目には、私の愛する彼の姿は見えなくなっていた。
その代わりに、金髪の高身長なある男性が映った。
服は学ラン姿だったから中学生なのかな?
どこか儚げで、美しい青緑色の瞳が印象に残っている。
彼は私に向かって穏やかな笑みを浮かべ、手を振りながらこう言った。
「あなたなら大丈夫。僕たちはいつまでもあなたの味方ですからっ」