~叶笑side~
どういうことなの、これ。お互いに笑顔で終われる結果が陽斗が犠牲になることなの?
私は笑顔になれないよ。どんなに陽斗が願っても、私はこの結末じゃ笑顔になんかなれない。
「これ、どうにかできませんかっ?」
「もう、これからはグダグダと同じ展開が続くだけだと判断致しましたので、残念ながらこの結末からは変えられないです」
憎い。陽斗の亡霊さん、ちっとも優しくない。
大切な人をけがされたような気がして不愉快だ。
……私の記憶は減っていくばかりなのに、なんでこんな残酷なことをするんだ。
私が死んで終わり、でいいじゃんか。
何も関係のない陽斗が死んじゃう必要なんてこれっぽっちもないじゃんか。
「だったら、今ここで私を殺してください。彼がいない世界で生きていたって何の意味もないです」
「そう言われましても、あなたを殺せるほどの力を我々は持っていません」
自殺すればいいって話だけれど、私は弱いからそんな勇気はない。
誰かに殺してもらうほうが、自分で死ぬよりも楽に死ねると思う。
それに、せっかく生かせてもらえたのに、自分で自分を殺めるなんて出来ない。
「生きる意味ってあると思いますか?少なくとも今、私はそれがないんです」
「生きる意味……」
顎に手を当て、静かに考えている亡霊さんはいたって真剣な様子だ。
どうせ、亡霊さんになんが生きる意味とか分からないんだろうけど。
「生きる意味……それは、存在しません」
真顔でそう言い放つ亡霊さんを、私はきっと大きく目を見開いてみているのだろう。
「え…?ない?」
「生きる意味なんて、人間が何かに縋って生きようとしてできた夢幻です」
生きる意味がないから私は死んでもいいんだ、生きる意味を失ったからもうどうでも良くなったんだ。
そうやって生きる意味を理由にして生きて、死ぬ。
それは自分を守るための言い訳で、本当はどうしたいのかという自分の気持ちから目を背けているだけ。
あぁ、そんな考えもあったんだ。本当は、自分は、何がしたい?どうしたい?
「人間でもないのにこんなこと言ってすみません。ですが、一番大事なのは自分のために生きたいかどうかなんじゃないのでしょうか」
自分のため……私は、本当は陽斗と一生を共にしたかった。
だけど、多分、もうこの願いは叶わない。