〜陽斗side〜
俺は、今、どこにいるんだ?湖以外は何もない、真っ白な空間に、俺はいた。
しばらく歩くと、水晶のようなものが見えた。…そこに映っていたのは、叶笑が死んでしまった後の世界だった。
「なん、で?俺、あれだけ願ったじゃないかっ」
「突然申し訳ございません」
え……?聞き覚えのある、大好きな声が聞こえて振り返ると、そこには叶笑がいた。
いつもと違うのは、よくアニメで執事がするような格好をしていて髪の毛が肩よりも上まで短かったことだった。
「叶笑、なのか?」
俺が聞くと、帰って来た言葉は「あくまで叶笑様の亡霊です」だった。……ふざけてんのか?
「私は、叶笑様が死んでしまう前の亡霊です。あなたの望み、叶えて差し上げましょう」
嘘くさい笑みを浮かべた叶笑…の亡霊は、やはり不気味だった。
「俺の望み、何か分かるか?」
「えぇ、もちろんです。叶笑様に生きてほしいのでしょう?代わりに、あなたが死んでしまうことを条件に」
「あぁ、その通りだ。……本当に叶えてくれるのか?俺はまだ、あんたのことを信用しきれてない」
あまりにも叶笑と違うから、俺の大好きな彼女とは違う人のようだ。
ただ、本当に、叶笑が生きてくれる未来にしてくれるのかは分からない。これは試してみた方が良さそうだ。
この空間の謎も気になるからな。一回、ちょっとしたゲームをしてみよう。
「あのさ、今から俺とあんたで嘘か本当かを見分けるゲームをしようよ」
「……なぜでしょうか。時間の無駄では?」
「あんたのこと、完全に信用してみたいんだよ」
「そういうものなのでしょうか。…承知致しました。先行はあなたでよろしいでしょうか」
無駄に俺に問いかけてくるところ、そこは叶笑とよく似ている。
「それじゃ、俺は過去に彼女がいた」
「嘘ですね。気になる人は保育園の頃はいたようですが、それも恋では無さそうですし、そもそも叶笑様以外の女性とお付き合いはしていませんね」
うん。恐ろしいほどに俺のことを知っているな。正直黒歴史の保育園児の頃のことまで把握しているようだ。
彼女は無表情に正確なことを言うものだから調子が狂いそうになるな。
しかも、俺の大好きな人の顔をしているのだからなおさらだ。