その代わりに、二人にあるプレゼントを渡す。もしもの時のために、最近持ち歩いていてよかった。

「はい、これ、二人にあげるよ」

「え、ミサンガ?」

岩下は思いっきり戸惑っている。叶笑に関しては、まだ泣いている。

「岩下は、試合とか大事な場面で勝利できるように、幸せになれるように。叶笑はいいご縁がありますように、幸せになれるように。願いを込めて作ったんだ。あ、これ、呪いとかじゃないからね?」

冗談を言って見せたけど、無反応だった。…ま、無理もないか。

二人は、泣いていた。岩下も、堪えられなかったのか泣いているし、叶笑はさらにひどく泣いている。

嗚咽を堪えられないのか、二人ともから「ぅう、、」とか、「ヒック」みたいな声が聞こえる。それが、病室に響いていた。

医師は気まずそうに、

「これからは経過観察しかできません。できるだけ安静にしておいてください」

と言い残して病室から立ち去っていった。


それから、特に話をするわけでもなく俺たちはただただ、病室に佇んでいた。


それから、俺の入院が始まり、学校に行けなくなった。

叶笑も入院しているけど病室は違うし一応彼女も患者だから、滅多に自分の病室から出られないために会う機会が減った。

また、最近はいろいろな人が見舞いに来てくれていた。

心の底から心配している人なんて少ないと思っているから、正直、相手するのがめんどくさかった。

そう、俺は究極に捻くれているのだ。…自分で開き直っても意味はないのだけれど。

それでも、岩下と会えるのは嬉しかった。他のクラスメイトや先生が病室から出て行ってからも、しばらくは岩下と二人きりで話す。

そんな岩下は、俺の見舞いの後に叶笑のところにも行っているらしく、俺の様子を彼女に伝えているらしい。


…あんまり気は乗らないけど、叶笑と岩下で将来を共にしてもいいのではないかと思う。


二人が幸せになれるなら、俺はなんでも応援する。もちろん、俺が生きるっていう選択肢はないけど。