そんな中、ある気になる言葉が耳に入った。意識が朦朧とする中、耳を澄ます。

「あれ、今気づいたけどさ、陽斗の耳にピアスかな?前まではつけてなかったよね?もしかして、叶笑さんにもらった?」

前に叶笑のことが好きだと言っていた男子の声だった。

「あ、本当だ。岩下って、陽斗と一番仲良いよな?お前は気づかなかったの?」

今度は、岩下とよく一緒にいるやつの声だ。…確かに、ピアスどうしたの?なんて聞かれはしなかった。

「気づいていたさ。朝、陽斗が教室に入った瞬間に」

そうだったんだ。気づいてたんだ…言ってくれてもよかったけど、きっと気遣ってくれたのだろう。

俺が他の男子たちに絡まれないように、冷やかされないように。

「俺、ぶっちゃけ、陽斗がいつもよりも元気がないことに気づいてた。でも、精神的なやつかなと思って少し様子見てたんだけどさ……ごめん。もっと、病気とか、そう言うふうに頭を働かせていればよかった。そうすれば、もっと早くに気づけたのに」

「…岩下、いつも俺のこと気にかけてくれてありがとう…本当に、お前はいいやつだ」

俺がそういうと、なぜか岩下は顔を顰めた。

「陽斗、お前、マジで大丈夫か?声、ほとんど出てない…保健室に行くぞ」

あれ、声、出てなかった?って疑問に思ったのも束の間、俺は岩下にお姫様抱っこをされていた…らしい。

らしいと言うのは、すでに俺は意識が限界に達していて、体が浮いたことすら、分からなかった。

でも、他の男子が騒いでいて、お姫様抱っこ?!と叫ぶ声が聞こえたから。

「岩下、お前、俺とほぼ同じ身長、だろ…?重くないか?」

「もう、何も話さなくていい。ゆっくり休んどけ。…大事な親友なんだから、重さなんて気にしない」

その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。


 

 次に目が覚めた時には、視界に映るもののほとんどが白い空間だった。

どうやら、病院のようだった。そして、そばには……俺の大事な人と、親友がいた。