翌日になると、俺は部活へ行く準備をした。今日は試合とかはないけど、大事なミーティングの時間がある。
午前中のほとんどは部活の時間になるため、お昼はどこかで済ませなければいけない。
だから俺は財布に三千円を入れて、その財布を俺のリュックに入れた。それと、大事に包装してあるプレゼントも。
部活が終わり、俺はお店の中に入るのがめんどくさかったためコンビニで適当におにぎりを買った。
それからすぐに、叶笑のいる病院へと向かう。
叶笑の病室に入った途端、いつもよりも爽やかな風を感じた。
暖房でむわっとしていない、軽やかな空気に、俺は思わず深呼吸をした。肺に、綺麗な空気が溜まった気がした。
「叶笑、今日の病室は思ったよりも空気が軽い感じがする」
「あ、そうなんだよね。昨日から扇風機を作動して、換気もしてるんだ。流石に息が吸いにくいからさ」
彼女はそう微笑んだあと、俺の姿を見て目を丸くしていた。
「陽斗、もしかして今日部活かなんかあった?」
「うん。あったよ。今はその帰り」
「珍しいね。土日は大体部活終わって、一旦家に帰ってからきてくれてたのに」
流石は俺の彼女。些細な変化に気づいてくれる。髪の毛を切った時も、友達よりも先に気がついていた。
「今日は急いで渡したいものがあったんだ」
俺がそういうと、彼女は「私も」と言った。もしかしたら、お互いの気持ちが通じ合ったのかもしれない。
これがテレパシーというやつなのだろうか。
ま、それは一旦おいておこう。それよりも大事なのはここから。
「あのさ、叶笑にあげたいものがあって…」
「うん?」
「これ、どうぞ。気に入らなかったらごめん」
大事に包装してあった紙を丁寧に剥がし、中身を見た時には、彼女はうっすらと目に涙を溜めていた。
「はい。これ、喜んでくれるかはわからなかったけど、叶笑に似合いそうだったから」
「こんなに綺麗なもの、どうやって見つけたの?私がもらってもいいの?」
「大丈夫に決まってるだろ。見つけたのは、うーん…一目惚れみたいな感じ?あ、これだ!!って思ったんだ」
彼女の涙は止まらない。静かに頬を伝う雫に、俺は少しだけ見惚れてしまっていた。
俺が彼女にあげたのは、やや細いチェーンのようなものに指輪に似た形のリングがぶら下がっているやつだ。
彼女には可愛すぎたり、カッコ良すぎるネックレスは似合わないと思っていた。