あれから何ヶ月もの月日が流れた。テレビのニュースではもうそろそろ雪が降ってもおかしくはないだろう、と言っていた。
叶笑の記憶は、やっぱり俺たちだけのが減っていっていた。
何とか、まだ続けている日記を頼りに大体の記憶は思い出しているみたいだ。
すっかり、紅葉していた葉も枯れ落ち、枝は寂しくなってしまっている。まるで、人生の終わりを告げているみたいだ。
俺の体調も、時間が経つにつれ悪くなっている。ただ、俺には家族はいないから、病院には行ってはいない。
あ、でも、叶笑が入院している時はお見舞いには行くけど。
あのあと、叶笑はたまに復活して学校に行く時もあれば、また入信している時がある。
そして、今日も叶笑は入院している日だ。手にはあの、日記を持っている。
「叶笑、今日も寒くなってきてるね。体調はどう?」
最近、彼女の病室にいた例の通り魔の被害者の定員さんは退院した。
そして、とうとう暖房が機能し始めた。
「私は全然元気だよ。本当に不思議なんだけど、いつも陽斗が来てくれる時間帯だけ、耳が聞こえるんだよ?奇跡かな?」
「さあ?でも、俺の時だけは耳が聞こえるのって、すごく嬉しい」
「え、別に元気がいい日は耳も聞こえるよ?」
「そこはロマンに行こうよ」
とか、くだらない話で盛り上がって笑えるのはいつものこと。幸せな日々も、もうそろそろ終わりが近づいてきている。
今日からちょうど一ヶ月後にはよく、恋人たちが盛り上がるイベントが待ち構えている。
今日はその相談もしようかな、と思っていた。
「え、クリスマスプレゼントぉ!?私なんかが、もらってもいいの?」
「当たりまだろ?俺の彼女なんだから。それに、まだ早いとは思ってるけどどういうものが欲しいのかなあって」
「うーん。あ、ど定番だと思うけどさ、ネックレスが欲しいかな。アクセサリー、私は全然持ってなくて」
ネックレスか……難しいな。俺って、芸術のセンスはイマイチだから、俺が選んでも喜んでくれないかもしれない。
俺は芸術の教科は全部四が最高記録だけど、叶笑は小学校の頃から一度も四以下の記録をもらっていないらしい。
つまりは、芸術だけのテストがあったならば、きっと叶笑よりも優秀な人はいないということだ。
叶笑にそんなことを伝えてみると「私は陽斗にもらったものなら何だって嬉しいよ」なんて言っちゃう。
俺の理性は、まさに限界ギリギリだった。