〜叶笑side〜
正直顔を合わせにくい。陽斗さんに話しかけられてからなんか気まずい。いや、私がそう思っているだけなのかもしれないけど。
教室の前で立ち止まっていたら後ろから声をかけられた。
「なーにボケっとして突っ立っているのよ、叶笑」
「わぁ、びっくりした。急に話しかけないでよ」
「それより早く教室に入ろう!話したいことがあるんだー」
いつも楽しそうな彼女についていく。教室には彼の姿があった。特にいつもと変わった様子は無くて安心する。
「でさぁ、別れたんだよね岩下くんと。でも、中本くんと新しく付き合うことになった!」
めでたいのかなんなのか分からなかったけど一応おめでとう、と祝っておいた。
ワクワクする!とキラキラした瞳で言った彼女に問いかける。
「あのさ、このクラスに別れた本人いるけど大丈夫?まぁまぁ大きな声で話してたけど」
「あぁ、そうだったね。まぁ、もう大丈夫だよ!もう関係ないもん」
そう言う彼女の瞳は一ミリも曇ってなかった。てか、きっとこの声も聞こえていそうだけど。
「叶笑もそろそろ彼氏作りなよー?絶対モテてるから」
「え、いやぁ、でもさ、美月には敵わないから。今はまだいいかな」
ふーん、と彼女は返事をする。私は彼女を見ていると、そう言う関係は色々めんどくさそうだと思う自分がいる。
ちらっと陽斗さんの方を見てみると彼女の元彼達と一緒に楽しそうに笑いながら喋っていた。
「やっぱ、叶笑にも好きな人はいるんじゃん!あ、やばい、授業始まる」
そう言って彼女は席に戻っていった。
男女ごちゃ混ぜの5人グループを作ってください、先生の合図にみんなが動き出す。
今から国語で書いた小説をグループの仲間で回して遂行する。私はもちろん、美月とは一緒だ。残るは男子。
誰と組もうか迷っていると後ろから声をかけられた。
「俺らと一緒に組まない?」
まさかの陽斗さんからのお誘いだった。
答える暇もなく美月が、私はいいよと答えてしまったので私は渋々別にいいよ、と答えてしまったのであった。
「じゃ、よろしくね」
無事にグループが決まり小説を回して推敲する。
「本当にすごいね。直すところが一つもないよ」
私に話しかけたのは陽斗さん。私の原稿は彼が推敲することになったのだ。まぁ、とそっけなく返すと怪訝そうな顔をした。
「最近、俺に冷たくない?てか、最初から?」
「……」
「ほら、今も。あ、俺の小説どう?今推敲してなくても前読んだでしょ」
急に絡んできた。何がしたいんだ彼は。ただ、純粋に思ったことは彼に伝える。
「すごく切なくていい物語だと思いました。表現技法も忘れずに使っていてすごいと思います」
そういうと彼は小さくやった、とガッツポーズをして喜んでいた。あぁ、眩しいな。
話してみると次元があまりにも違うことに今更だけど気がついた。でも勿論、他の人にも太陽のように接している。
疲れたりしないのだろうか。直接聞けるわけもなく、ただ独り言のように心の中で呟いた。
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そんなこんなで今日はあっという間に授業が終わり、もう部活の時間になっていた。私は情報部に所属している。
タイピングやデジタルでのお絵描き、プログラミングを主とした部活だ。今日も適当に時間が過ぎるのを待っていた。