俺は叶笑の作業中に病院から家に帰ってきた。今日はいつもよりも少し早く帰ってこなければいけなかった。

叶笑に頼まれた買い物のついでに、こっそりと、俺は俺が欲しかった材料を買ってきた。

部屋をカラフルに染めていく。塗料で塗っているのではない。飾りをつけているのだ。

あともうそろそろで、予約していたケーキも届く。それまでには飾り付けは終わっていたい。


 それから十分ほどで、家の飾り付けは終わった。

あと五分、何をしよう。ケーキが来る時にバタバタはしたくない。なら、今できるのはバースデーカードだろうか。

俺は袋の中から買ってきたメッセージカードを取り出してコメントを書く。

できるだけ綺麗な字で、心を込めて書く。もちろん、一言では終わらない。俺はその辺の男子とは違う。

雑に、乱暴にこなすことなんて無い。もし俺がそんなことをしたならば、俺は即地獄行きだ。

なんてやっていたら、家のチャイムが音を立てた。

「はい」

「頼まれていたケーキを届けにきました!あ、あの、少し待っててください!今、ボックスから取り出します!」

やけに語尾に「!」がついている女子の定員さんは慣れていない様子で作業をしている。

落としはしないだろうな……

って思ってたけど、その心配は必要なかった。ケーキを持った途端、彼女には余分な動作がなく、箱を水平に保って運んでくれた。

「あのさ、キミ、新入りだったりする?」

「え、あ、はい!最近この仕事のアルバイトを始めました天乃恵実(あまのえみ)と申します!」

何で自己紹介したんだろう?別にキミとはもう会わないだろうし、名前を覚えていられるほど、俺は余裕がない。

ここは俺も自己紹介したほうが良いのだろうか。いや、個人情報の漏洩だ。ここはやめておこう。

「ケーキ、俺の唯一の家族に渡す大切なものなんだ。だから、大切に運んでくれてありがとう」

とお礼だけ言っておく。実際に、結構綺麗な状態を保っていそうだ。

「いえ!もしまた何か頼みたいことがあったらいつでもご利用ください!では!」

そう言って、女子の定員さんは去っていった。って、彼女はバイクに乗っている。免許はあるのだろうか。

……いや、乗らせてもらっていた。誰か、男の人がバイクを運転していて、その腰にさっきの人がしがみついていた。

これ、めちゃくちゃ非効率じゃないか?多くても二つの荷物しか運べない。

てか、あの人は若そうだったけど、一体いくつ何だろう。少なくとも学生に見える。

「ま、そんなこと考えたって意味ないか」

俺は、大切にケーキを冷蔵庫まで運んでいった。