朝から雨が降るなか、こんな日でもクラスメイトは元気な様子だった。
俺は少しずつではあるけど、仮面を剥いでいっているつもりだ。一応、そんな俺から離れる奴なんていなさそうだ。
どこかで安心しつつ、早く一人になりたい、叶笑と二人の時間を増やしたいって思う自分もいるのには変わりはないけれど。
でも、いつかのように、嫌な予感しかしない。なぜなら、叶笑はまだ学校に来ていないからだ。
あと三分もすれば、朝の会が始まってしまう。それまでに間に合うのか?
「…と、陽斗、はーるーとー!」
「っえ?何?」
いけないいけない。まだ、俺は一応優等生っぽいのだから、もう少し気をつけなければ。
「本当に、陽斗の彼女がまだ来てなくて心配なのは分かるけど、俺たちの話にも集中して?」
「なっ!まだ彼女じゃないし、集中はしていたよ?」
岩下って奴は全く、地味に大きな声で言うんじゃないよ。ほら、クラスメイトがこっちを向いたじゃんか。
「…陽斗、自分が言ったこと分かってる?一旦、話に集中していたかは置いといてだけどさ。俺よりも大きな声出しちゃって、叶笑さんの彼女かってところでまだ、って言うのはさ、もはや叶笑さんが好きってことはクラスメイトにアピールしてるんだよ?」
言われて気づく、が、もう遅い。
あっという間に俺はクラスメイトに囲まれ、好きなの?とか、俺も気になってるんだけど譲ってくんない?とか、
くだらない言葉を吐いていく人たちにうんざりする。
自分のミスだけど、流石にここまでは迷惑極まれなり。そんな中、チャイムと同時に
「おい!柳瀬がいい奴だからと言っても、もうチャイムがなってるんだよ。席につけ!」
と言いながら入ってきた先生に救われた。こればかりはありがとうございます、先生。感謝です。
でも、すぐに気づく。……叶笑は来ていない。だけどすぐに、
「ちなみに、今日の欠席は砂畑だけだ」
なんて先生が言うものだから、今度こそ俺は一気に谷に落ちた。
この次の日も、一週間後も、二週間後も、叶笑は学校に来なかった。スマホを彼女は持っていないから連絡も出来ない。
先生は先生で明確な理由を言わなかった。おかしい。絶対におかしい!だって、理由なしで休むことなんて彼女はしなかった。
「陽斗、叶笑さんが何で休んでいるのか心当たりは無いの?」
岩下にこう聞かれるけど、心当たりなんて無い。俺が分かるはずもないだろ……
「あんなぁ、陽斗の気持ちも分かるけどさ、最近は特にみんながお前に気を遣ってるってことに気付いてる?」
…気を遣ってるって、普段は俺がしていることだろ。みんなが俺に気を使うのは、俺が優等生だからで特に意味なんて無い。
大体の奴は俺に気を遣って、少しでも自分の評価が上がれば良いと思っているんだ。