って、俺の身勝手な考えなのかもしれない。てか、俺の身勝手な考えだ。
もしも叶笑が恋愛してはいけないのなら、俺は人を愛してはいけない、だ。
生きる世界がみんなとは違う。環境を恨んでいるんじゃない。
人として、俺はだめな人間なんだ。本当なら、俺は人のことを愛せるはずがない。
人は自分にとって都合の良いストーリーを生み出してしまう。
それも、俺を含めてのハナシ。
「叶笑、君に言いたいことがある。…話を聞いてもらってもいい?」
「うん。何?」
「あ、あのさ俺、叶笑のまっすぐなところとか、笑顔とか、全部、好きだ」
意を決して告白した。でも、俺のゴールは恋人ではない。ただ、想いを伝えるだけ。それだけだ。
だから、どんな返事をもらってもいい。
俺が望むのは、まだこれからも今みたいな関係でいること。気まずくならないことだ。
当の彼女は、なんとも言えない表情をしていた。
それから彼女は顔を青ざめて、ポケットからペンとメモ帳を取り出した。
もしかして、と思う。……神様、タイミングというものを知っていますか?
【陽斗ごめん。最近は大丈夫だったけど、耳が聞こえなくなった。最後まで聞き取れなかった】
俺は今カバンを持っていないし、ペンと紙も持っていなかった。
だから、俺はスマホをポケットから出して文字を打った。
【俺は大丈夫だよ。でも、本当に久しぶりだね。耳が聞こえなくなるのは一ヶ月ぶりくらいかな?】
【うん。そうだね。ごめんね!本当にごめん!】
【謝ることじゃないだろ。逆に、今までしばらく耳が聞こえていた方がすごかったんだよ】
彼女はなかなか謝るのをやめなかった。さすがに、俺の方が申し訳なくなる。
【そう言えば、さっきはなんて言ってたの?叶笑の、までしか聞こえなかった】
【いや、別に大したことじゃないよ?ただ、叶笑の親はこの時間まで娘が帰ってきていないけど心配してないのかなって】
【わ、そうだった。帰り際、相談に乗ってくれてありがとうね!陽斗も気をつけて帰ってね】
【もしアレなら送ろうか?ほら、もう陽が沈み始めているからさ、女の子を一人で返すわけにはいかないっていう男魂だよ】
男魂なんて根拠はない。これは知らない。ほとんどの男子は関係のない女子には送ることなんてしない。少なくとも俺は絶対に。
人間関係って、本当にめんどくさいなってつくづく思う。でも、叶笑だけは違う。
だって、俺の大切な、愛する女の子だから。