なっ!?

驚いて動けない俺に、岩下はさらに「意外とこう言うの弱いんだ?」なんて、また耳元で囁いてから屋上を出ていった。

な、な、な、な、な、な、な、ななな?!?!

いやでも、ここは冷静になれ。これはただ単にからかっているだけだ。

それに、叶笑に情けない姿を見られたくない。

俺はそれを悟られないようにしながら言葉を振る。

「あ、か、叶笑。なんでここにいるの?」

少し噛んでしまった。叶笑は気にしていないようで安心。

「あることを手伝ってもらおうと思って、岩下さんに呼んでもらった」

そういう彼女の表情を読み取ることはできなかった。

てか、岩下と普通に会話をしていた。もしかして、叶笑が難聴は嘘だって言ったのだろうか。

「なんで直接俺を呼び出さなかったの?わざわざ岩下に頼むくらいなら、俺を直接呼んだほうが手っ取り早いよ?」

「うーん。サプライズ的な?感じ。ここに来るまで、少なからずドキドキしたでしょ?なんだなんだって」

ニコニコする彼女がすごく愛おしい。だからこそ、なんか妬けるなぁ。岩下に頼んだことが気に食わない。

「まぁ、少しは?でもさ、難聴のふりをしているのに、岩下にそれは嘘だって言うのはリスクがあると思うんだけど」

「あぁ……」

「バラされるかもしれないんだよ?…まぁ、岩下のことならきっと大丈夫だとは思うけどさ。でも、これからは気をつけて?」

あえてやや冷たい反応をしてみた。意外と効果はあったみたいだ。

「ごめん…怒らせたよね。私の心配をしてくれてるのに身勝手な奴だって思ったよね。ごめん」

謝るところは少し違うけど別にいいよ、と言ってあげる。すると、明らかに安心したような顔をした。

彼女はなんやかんやいって正直ものなのだ。

「…あ、そうだ、本題に入るね?」

「あぁ、もちろん。ちなみに俺に手伝える内容?」

「微妙だなー。手伝うって言うよりは見守っていてほしいだけかも?」

「俺に聞かれたって分からんし」

話を聞くところ、彼女は自分が死ぬまでに家族に何かをプレゼントしたいのだそうだ。

その相談と、彼女がプレゼントを届けるのを見届けることを俺が手伝えないかって言う話だった。

「そんなことでいいなら、俺がいくらでも付き合うよ」

「本当に?ありがとう」

でもね、叶笑。キミはきっと死なないよ?俺が代わりになるから。毎日祈っているんだよ?叶笑とその家族を守ってくださいって。

だから、きっと大丈夫。俺の代わりにたくさん生きてほしい。


__いつか、また逢えたなら、俺は今度こそ、キミを見つけ出して、ずっとそばで、守るから……