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 誰か、大切な人が海に溺れている。頭で考えるよりも先に体が動いた。

「おいっ!!!」

誰かの叫ぶ声を無視して海に飛び込んだ。

「大丈夫っ!!俺が、俺が代わりになるから!!!だから、……………絶対に生きて!!!」

そうして俺の意識が途絶えた。







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 あー眠たい。授業中に寝ることは優等生は絶対にしない。だから頑張って俺は眠気に耐える。

この人の授業、絶対に眠たくなるんだよなぁ。声が心地良すぎて眠気を誘うんだ。


 叶笑と一緒に帰ったあの日から約二ヶ月が過ぎた。

あの翌日はなんとなく気まずい雰囲気になったけど、俺がちょこちょこ声をかけていくうちに普段通りに会話できるようになった。

「おーい、陽斗?お前の好きな人のことで頭がいっぱいになっているなかでごめんなんだけど」

「んあ?あぁ、岩下か。どうした?」

「少しばかり手伝ってほしいことがあるんだ。もちろん、陽斗にとってもいいことだと思うよ?」

俺はそんなことを言う岩下の顔がニヤニヤしていることに気づけなかった。



 どこをいくんだろうか。岩下についてこいって言われて来てみているが、ここから繋がるのは限られた教室しかない。
 
しかも空き教室や資料室だけ。こんなところに何かあるのだろうか。

「岩下、どこに向かってるんだよ。この辺にその手伝うべきものがあるのか?」

「まだ言えないよー。あ、でもヒントは言ってあげようかなぁ?」

煽られているようで少し気に食わない。意地でも自分で答えを見つけたい。

「…別にいい。さっさとそこに連れてってよ」

「へーい。まぁ、でも?面倒なことではないから大丈夫だと思う」

…よく分からない。こいつはいつだって謎に包まれている。

せっかく俺は素、で居てあげてるのに、なんか弄ばれてる感じがする。



……で、結局たどり着いたのは屋上だった。

「ここってさ、意外と鍵が脆いんだよねー。力を少し入れただけで開いちゃうんだよ?」

意地悪そうな顔をした岩下がそう言う。きっと何回もここに来たことがあるんだろう。

そして、岩下の言った通りにすぐにドアが開いた。


 眩しい光がドアの隙間から差し込む、と同時に強い風が吹く。

完全にドアが開いた時に見えた景色に、俺は思わず息を呑んだ。

なぜなら、そこには俺の大切な人が立っていた。

「岩下さん、陽斗をここまで連れて来てくれてありがとう」

「んーん。こんなのちょろいもんだよー。親友のため、そしてその親友の彼女のためだから」

「おいっ」

おいおい冗談だろ?まだ彼女じゃないし、そんなこと言って叶笑に嫌な思いさせたらどうすんだよ。

という鋭い視線を岩下に注ぐ。当の本人は何やら微笑んでいる。

「はいはい、すみませんねー?」

と言いながら、岩下は俺に近づく。そして彼は耳元でこう囁いた。

「きっと大丈夫。お幸せに」