叶笑がどんなに危ない目に遭っても、俺がどうなろうと叶笑を守る。
 
叶笑が結んだ神様との約束とか、守れなくなっても、俺が代わりにその約束を守る。

だから、叶笑だけは……

「あのさ叶笑、俺さ、こうやって話す仲になる前までは正直、なんでこんなに純粋で眩しいんだろうって少し妬んでた」

「それは私だって…」

「俺からしたら羨ましいよ、叶笑が。いつも眩しいから憧れてるんだよね」

本当に、今でも思ってる。眩しい。でも、それだけじゃなかったんだ。

光って、影がないと成り立たないものなんだ。その影が、どんな秘密を持っているかによって光の持つ性質が変わる。

俺だったら優等生にならなければいけないから猫を被っているという秘密を隠していた。

だからこそ、光である部分にはきっと、優等生以上にも映っていたかもしれない。

それはあくまで、素の自分ではない。努力の結晶なのだ。

叶笑は、いわゆる自己犠牲という秘密を隠していた。自分の弱さと向き合おうとしていた。

でも、誰も信じてはくれない。理解してくれない。期待すれば裏切られる。だから最初から期待なんてしない。

だけど周りには明るく振る舞う。自分のそんな脆い心を知られたくないから。

影の影響は意外と大きい。その分、光であろうとすればするほど苦しくなる。

分かったように言うな、って思われるかもしれないけど、俺もなんとなくそうだったから分かるつもりだ。

人はすぐに物事を決めつけてしまう。誤解をしてしまう。

「叶笑は強いよ。自分の命と引き換えに大切なものを守る、それは俺には到底できないや。俺は弱いから」

「陽斗は弱くない。こんな私にも真剣に向き合ってくれる。側に居てくれる。それだけでもう私は十分だよ!」

そう言って彼女は微笑んだ。切なく、だけど少しだけスッキリしたような表情。

そうじゃない。そうなんかじゃない。

「……側にいるだけじゃ、足りない。全然足りない。俺が叶笑を守るよ…」

「足りないって…守るって言われても、神様の言うことには逆らえないんだよ?私はこれでいいの」

「何がこれで、いいだ。これが、いいって言えないってことは心のどこかで、まだ生きていたいって思ってるってことだろ」

神様の思うようにはさせない。俺の命よりも大切なものを奪わせない。

叶笑だって、生きたいってまだ思ってるんだ。だったら俺が、代わりになる。

だから、神様がいるのなら祈りたい。叶笑を奪わないで!俺が代わりになるから!

そうして、何事もなくお互いが家に帰ることができた。