「陽斗、顔が青いけど大丈夫?マジで」

「俺はなんで生きているんだろう……叶笑を危ない目に遭わせておいて学校で授業を受けるんだ?サイテーな男だな」

あとで先生に彼女が入院している病院と部屋を教えてもらおう。

できれば今すぐにでも叶笑の元に駆けつけたいところだけど、きっと先生は阻止してくるから優等生、の俺は先生に従うしかないから。

だから、今は彼女の無事を祈るしかない。神様、もしこの願いが届くのなら俺から誰も奪わないでください……!

「お前、ふざけてんの?そりゃぁ、少しはサイテーな男だよ?俺たちは誰だってサイテーなんだ。お前が死んでも結果がどうなるかなんて、神様以外誰も知らない。一度過ぎてしまったことは後戻りはできない」

「……」

「それでも、目を背けちゃいけないし自暴自棄になったってなんの意味がないし、何より、叶笑さんがそれを望んでないんじゃない?きっと……まぁ、まだ付き合ってはないんだろうけど」

まさか、彼がこんなにもいい奴だったなんて……いや、いい奴だとは思ってたけど、ここまで考えているとは想像以上だった。

彼の顔つきはいたって真剣そのもので、からかっているわけでは無さそうだ。

本当に、持つべきは友達、いいや、親友だ。岩下、いつもありがとうなんて言えるわけもないので誤魔化す。

「ってか、そのお言葉はありがたいけどなんで俺のことなんでもお見通しみたいな感じなの?実際、叶笑とはまだ付き合ってはいないけどさぁ」

「何年親友してると思ってんの?ま、この言葉を言わせてもらっていることには感謝してるけど」

「それはどういたしまして」

「てか、まだ、なんだね。ふーん?」

やっぱり、恋愛に関しては、彼はとびきり鋭いのだろう。岩下はなんだかんだ言っても岩下そのもの。

俺も、いつかは俺らしく生きられるようになってるといいな。いや、なってみせる。



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 結局先生がなかなか話してくれず、叶笑の病院と部屋を聞き出すのに時間がかかってしまった。

教えてください、彼女は大切な同じクラスメイトですよ?先生はお見舞いに行っているんですか?などと粘ってはいたけれど優等生、の

仮面を被ったままではダメだった。だから半分ほど仮面を剥いで、実は俺は叶笑さんのおかげで心から救われたんです、

みたいに訴えかけたらしょうがないなぁ、と言ってやっとで教えてくれた。


「……なんで岩下が一緒についてくるんだよ」

「そんな不満げな顔をしないでよ。別にいいじゃんか、親友の未来の彼女さんの安否を確認しても」

俺としては二人きりで話したかったんだけどなぁ。岩下は一度決めるとなかなか意見を変えないからしょうがないけど。

叶笑は市の中でも大きい病院に入院していた。部屋の番号は501の個室らしい。

彼女は午後二時くらいに目が覚めたばかりで、午前に会いに行っても顔を見ることはできなかったため結果としては放課後で良かった。


 いざ、部屋の前に立ってみると勇気が出ない。彼女に何か言われるのが怖い。俺はもう、気付いてしまったんだ。

今更嫌われたくない。傷つけたくない。傷つけられたくない。臆病な俺は彼女の隣に相応しいのだろうか。

「おい、早く入らないと看護師たちに怪しまれるぞ。ぐずぐずしてんな。男だろ」

岩下はそう言って、何も言わずにドアに手を伸ばした。俺は慌てて止める。せめて、開ける時は自分でドアを開けたい。

「俺に開けさせて」