「うん、バカだな陽斗は。うん」

「は?何いきなり失礼なこと言ってんの?」

もう、彼女が来てくれなかった悲しみよりも怒りの方が勝ってしまったらしく、岩下にも強い口調になってしまった。

今日の俺は最悪だ。

「だから、尚更彼女を守らないといけなかったでしょ?試合だけ観にくるんじゃなくて、もう最初からいてくれれば良かったんだよ。そりゃぁ、少しくらいは退屈な時間を過ごすことになってしまうのかもしれないけど……」

くっそ、こうなるなら彼女にスマホをあげれば良かったんだ。とりあえず、月曜日に彼女に聞いてみよう。そう思って今日を終えた。


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 来ない……来ない……来ない!なんで?嫌な予感がする。いや、ここで余計なフラグを立ててはいけない。

大丈夫、彼女はきっと大丈夫。もし休んだとして風邪とかなんかだろう。とか考えていたら朝の会の時間になった。

彼女は結局来なかった。珍しく先生がまだ来ていないけど挨拶だけを済ませる。しばらくして先生が入って来た。

今日もいつも通りめんどくさい朝の会が始まるのかと思っていたけど、そんなことはなかった。

それどころか顔を青ざめているし、どこか息が荒い。

どうしたのだろうと思ったのも束の間、嫌な予感が再び顔を覗かせた。

「みんなに説明しないといけない事がある。真面目に聞いてほしい」

ざわざわとした空気が一瞬で静かになる。

先生はいつもみんながうるさいことはあまり気にしていなかったので、初めて静かにしろと言われて驚いたからだ。

「砂畑叶笑さんなんだが、土曜日の午前、交通事故に遭ったそうだ……」

……俺のせいだ。俺のせいで彼女は事故に遭ってしまったんだ。

約束なんてしたから、スマホをあげなかったから、彼女に辛い思いをさせてしまったんだ。

「右足と右腕の骨折、そして脳の神経が傷ついたことによる難聴……叶笑さんは今、意識不明だそうだ」

次々と説明されていく。叶笑がそんなことになっているなんて信じられなかった。

でもそれは俺だけでは無いらしく、一軍の男子と女子までもが同様しきっている。

口々に「あんなに元気な叶笑さんが意識不明?」「土曜日の午前、俺らも外出していたよな?あぶな……」などと呟いている。


ふと視線を感じて、そっちの方に顔を向けたら岩下が心配そうな顔をしていた。多分口パクで大丈夫?と聞いている。

みんなには気付かれないくらいで首を横に振る。大丈夫なはずがない。今すぐにでも見舞いに、謝りに行きたいくらいだ。

岩下はまだ心配そうな顔をしていたけれど、チャイムが鳴ったため彼は渋々と言った感じで前に向き直った。