五郎さんに叱られたとは言っても、俺の本質を変えられる訳は無く、この世界の問題よりも、サウナ愛が溢れ出てしまうことは変えようがない。
そこで俺は前々から考えていたプロジェクトに、遂に動き出すことにしたのである。
それは・・・『サウナ検定』である!
ここは背景にドドン!
が欲しい所だ。
ここは目立させて欲しい。
いや、大いに目出させてくれ!
サウナビレッジが繁盛し、温泉街『ゴロウ』の移動式サウナが受け入れられた今、俺がやらなければいけないことは、これ以外には考えられなかった。
今一度、この世界にサウナとは何ぞや?と、問う必要がある。
そこで『サウナ検定』である。
内容は簡単だ。
使用上のマナーを中心とした問題を出題する。
そして、皆がどれぐらい理解しているのかを把握する。
ここはすまないが上から目線とさせて貰う。
何といっても、サウナ歴四十年以上の俺からの挑戦状だ!
手は一切抜かない。
異世界の上級サウナー達よ、掛かってきなさい!
サウナの神と謳われる俺からの試練である!
挑戦者望む!
フフフ・・・
サウナ島に激震が走った!
前々から噂はあった。
島野さんが遂に、動き出すのではないかと・・・
島野さんはこの世界にサウナを持ち込んだ第一人者であり、立役者だ。
あの人のサウナ愛は本物だ。
誰が何と言ってもそれは間違いない。
そして俺は知っている、あの人のサウナに対するマナーの徹底さは・・・時に苛烈になってしまう。
ああ、すまない。俺はマークだ。
お久しぶりです。
まあ、聞いて欲しい。
サウナビレッジがオープンしてから、かれこれ三ヶ月近くが経った。
今は慣れたこともあってか、落ち着いたものだ。
とはいっても、相変わらず予約は四ヶ月先まで一杯だ。
決して暇な訳ではないから、勘違いしないで欲しい。
大繁盛していると言える。
そもそも人材を多く揃えたから、仕事に慣れてしまえば、上手くシフトが周ることは想定済みだ。
実際に俺もだいぶ時間に余裕が出来たよ。
でもここまでの三ヶ月間は何かと大変だった。
特に大変だったのは、甘辛論争だった。
なんであんなことになったんだか・・・
恐らく震源地はメルルだろう。
あいつはハンター時代からそうだ。
とことん攻撃的になる時がある。
何があいつをそうさせるのか?
そもそもあいつは回復役だろう?
どうかしてるよ。
甘辛論争の所為で、注文が辛み一辺倒になった時には、流石に俺も焦ったよ。
可哀そうにマットも項垂れていたよ。
連日連日、辛い物ばかり作らされて・・・
見てられなかったな。
でも今では自然と落ち着いて、お客も好きな物を注文する様になった。
それでも辛い物が好まれるのは、スーパー銭湯との棲み分けの結果だからしょうがないのだが。
俺は台湾ラーメンが好きだ。
あの台湾ミンチの深みを感じる辛さが癖になる。
俺も当然予約しないと、食べることは出来ない。
要らない情報だったかな?
でも分かってくれるだろ?
あれは本気で旨い!
最高だ!
そして、遂には温泉街『ゴロウ』にまでサウナが設置されることになった。
それも移動式って・・・島野さんの頭の中はどうなってるんだ?
どうしたらそんな発想になるんだ?
俺には到底分からない、俺もサウナは好きだし、上級サウナーであるとの自負もあるが。
でもあんなサウナを思いつくなんて、島野さんはどうかしてるよ。
でも大したもので、これが温泉街『ゴロウ』で大いに流行ってるというからには、あの人の発想は間違い無かったということなんだろう。
訳が分からねえな。
そして遂にだ、島野さんが動きだした。
俺は驚愕したよ。
『サウナ検定』だ。
俺はこの時が来て欲しくはなかった。
何でかって?
分かってくれよ。
この世界の中では、俺は初期からサウナを嗜んで来たんだぞ。
その俺が検定に落ちる訳にはいかないだろう?
それにサウナビレッジの支配人なんだぞ?
もう今はプレッシャーと戦う毎日だよ。
サウナは楽しむものなんじゃなかったのか?
そうだよな?
なのに何で・・・
そうだよな・・・勝手に俺が自分でプレッシャーに、感じているだけなんだよな・・・分かってるよ・・・立場に拘るなっていうんだろ?・・・でも俺にだってプライドがあるんだ・・・分かってくれるかい?
はあ・・・
そもそも勘違いした、サウナビレッジの常連客が。
「俺は上級サウナーだ!」
なんて宣い出すからこんなことになるんだ。
それも一人や二人じゃない、それなりの数の奴らが言い出したから、質が悪い。
これは良くないと思っていたが、案の定だ。
いつもは温厚で、飄々としている島野さんだが、ことサウナに関しては人が変わってしまう。
遂に我こそは上級サウナーだと、名乗りを上げる不届き者を征伐すると、その鉄槌が下されることになったんだ。
島野さんの上級サウナー狩りだよ!
遂にこの時が訪れてしまった。
俺は巻き込まれただけなんだけどな・・・そりゃあ心の中では、俺も上級サウナーだと思っていたさ。
でも間違っても口には出さなかった。
そんなこと・・・島野さんに聞かれたら・・・言える訳がないだろう!
ちくしょう、これからランドとロンメルとサウナの勉強会だ。
試験勉強なんて始めてするよ。
はあ・・・
どうしたもんか・・・
胃が痛くなってきた・・・
うう・・・
最近は俺を訪れる人達の質が変わりつつある。
商人から常連のお客にだ・・・
理由は簡単だ。
サウナ検定の内容を知りたいと、連日遠慮の無い顔見知りの常連が、何を勘違いしたのか、事務所にまでやってくるようになった。
俺はゴンに言って、当然如く追い返すことにした。
何をそんなにまでやっきになっているのか?
まあそれだけ興味があると、前向きに受け止めているが、正直煩わしい。
我こそが上級サウナーだ!と宣言したからには、堂々と検定を受けろということだ。
いちいち探りに来るんじゃないよ、全く。
小賢しいんだよ!
まあサウナ検定とは言っても、そう大逸れた物ではない。
俺の意図としては、これを気にサウナのマナーの、更なる向上をはかるのが一番の目的で、何も本気で上級サウナーを名乗るなとは、思ってはいない。
そもそも好きに自分のことは、名乗ってくれればいい。
別に咎めるつもりは全くない。
後は副産物的に、この世界の識字率がこれを気に、少しでも上がったら嬉しい、というのもある。
現に一部の常連客が、メッサーラの学校に通い出したという噂まである。
真意は定かではないが・・・
サウナ検定の内容は実に簡単だ。
筆記問題を十問解いてもらうだけだ。
その一問を十点として、計百点満点の問題を解いてもらう。
制限時間は三十分。
その内八十点以上取れた者をサウナ一級、六十点以上取れた者をサウナ二級とする。
そんな簡単なテストでしかない。
それを受けたい者は、受けてくれというだけのことで、この一級二級というのも、俺が勝手に言っているだけで、資格でもなければ、免許でも無い。
正直ただのお遊びだ。
それをどう勘違いしたのか、特に旧メンバー達は戦々恐々としているようだ。
挙動の可笑しいあいつらを見ているのが面白いから、俺は放置しているのだけどね。
趣味が悪いって?
これぐらいいいじゃないか?
決していびっている訳じゃないからね。
フフフ・・・
因みに出題問題を並べてみるとこんな感じとなる。
・サウナ前には全身を洗った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナ前には体を拭いて水気を取った方が良いか否か、またその理由は?
・水風呂に入る前には掛け水、又は掛け湯を行った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナは粘れるだけ粘った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。
・サウナ室内では大声を出しても良いか否か、またその理由は?
・サウナに入室する際には、入る側優先であるか否か、またその理由は?
・サウナ室は上段の方が温度が高く、下段が温度は低いか否かまたその理由は?
・サウナは島野守が考案したものであるか否か
・あなたにとってサウナとは?
とこんな感じである。
少々厭らしい問題や、身内びいきを疑う問題もあるが、大目に見てやって欲しい。
特に最後の問題に関しては、俺の趣味でしかない。
勿論どんな回答であっても、満点をつけるつもりだ。
その人にとってのサウナなんて、その人の自由でしかない。
好きに回答してくれればいい。
俺は皆がサウナをどう思っているのか?に興味があるだけでしかない。
ただふざけたことを書かれたら、問答無用で切り捨てるけどね。
まあ、お遊びである。
好きに回答して欲しい。
どんな回答があるのか楽しみだ。
フフフ・・・
そして、サウナ検定の日時が公表された。
サウナ島は異様な空気に包まれていた。
入島受付とスーパー銭湯、サウナビレッジの受付に大体的に張り紙が掲示された。
その掲示内容はこれだ。
『挑戦者求む!サウナ検定を開始する!』
加えて来週の月曜の午前十時からと午後八時から、スーパー銭湯の大食堂にて、サウナ検定を行うという旨も知らされた。
参加費は一人銀貨三十枚。
検定内容は全問題筆記試験の全十問、制限時間は三十分と、公表されたのはこれだけである。
受付はサウナビレッジの受付にて行われ、最終受付は土曜日の午後八時までとする。
この告知にサウナ島は揺れていた。
特に従業員からの動揺が激しい。
それもその筈で、実にこの識字率の低いこの世界で、サウナ検定を受けるのは、サウナ島に住む者が大半と考えられた。
まさかのオチとなりそうだ・・・
そうあっては欲しくないのだが。
だが実際に受付を行ってみると、そうでもなかった。
実に四百名近い者達が、申し込みを行ったのである。
旧メンバー達とサウナビレッジの従業員には、強制的に参加する様に伝えてある。
それはそうだろう、こいつらが受けないのは考えられない。
そして神様ズからの参加者は、なんとカインさんのみだった。
流石に五郎さんは、
「儂は止めとく、趣味じゃねえ」
と言っていた。
ランドールさんはどうするか真剣に悩んでいたが、メッサーラの二校目の完成がまじかとなっている為、時間が取れるか分からないと、止めておくと残念そうにしていた。
彼には是非参加して欲しかったのだが、こればかりはしょうがない。
もし次回があったら参加して欲しい。
まあ予定はないのだが・・・
外の神様ズも、
「儂は興味無いのう」
「俺はそういうのはいらねえ」
「私は上級とか拘らないし」
「ムフ!」
「塩サウナ検定なら考えるけど・・・」
とこんな感じだった。
遂にサウナ検定が開始された。
大食堂には緊張感が漂っていた。
押し黙る者達、貧乏ゆすりを繰り返し、睨まれている者。
複式呼吸を行ってる、旧メンバー達。
不正は許さないと、スタッフが見回りを行っている。
この時ばかりは、関係無いお客さんも息を飲んで、スーパー銭湯を利用していた。
なんだかすんません。
空気を読んでくれてありがとう。
ていうかごめんなさい。
遂に開始時間を迎えた。
「サウナ検定開始!」
裏返された用紙を捲って、真剣に向き合う受験者達。
異様な空気感が漂っていた。
俺はその光景を、後ろから腕を組んで眺めていた。
俺は俯瞰で見ていた。
いったいこいつらは何をやっているんだ?と吹き出しそうになってしまったが。
でもここは笑ってはいけない。
真剣に挑んでいる者達がいる手前、俺もふざける訳にはいかない。
にしても俺も、よくもこんな事を考えついたものだ。
我ながら笑える。
サウナ検定って・・・日本でも聞いたことがないぞ。
カリカリと問題用紙に、記入する音が木霊している。
緊張の時間が過ぎて行った。
そして三十分が経過した。
検定終了の時間を向かえた。
「終了です!記入するのを止めてください!」
とアナウンスが入る。
「なお、夜の受験者に問題内容を漏らすことは控えてください。契約魔法までは行いませんが、後日その事実が判明したら、失格となります」
と、脅しまでかけていた。
いちいちそんなこと調査する訳がないのに・・・
でもこれぐらいで丁度いいだろう。
緊張感は崩したくはない。
そして夜の部も無事に、サウナ検定は終了したのだった。
結果は三日後に、事務所まで受け取りに来るようにと、最終のアナウンスが行われた。
検定を終え緊張感が解れてきているのが分かる。
いつのも大食堂が帰ってきた。
お客様にはご迷惑をお掛けしました。
本当に申し訳ありませんでした。
またのご来店をお待ち申し上げております!
俺は今、四百人近くの回答を行っている。
はっきり言って無茶苦茶楽しい!
そして、面白い!
俺は全ての回答に真摯に向き合い、そして間違いには模範解答を添えている。
間違いをここで正し、今後のサウナマナーの向上に努めて頂きたい。
実感したのは、皆が皆、サウナを好きなんだなということ。
俺は嬉しくて溜らなかった。
正直言って、遊び気分のおふざけで行ったサウナ検定だが、こうしてみると、やってよかったと思える。
回答をすることに、とても遣り甲斐を感じる。
俺は終日回答に没頭することになっていた。
楽しいと時間が過ぎるのが早いよね。
理解が得られたら幸いです!
いよいよ結果が伝えられる時がきた。
事務所の前では既に長蛇の列が並んでいる。
皆な、緊張の趣きである。
最前列にはマークとランドとロンメルがいた。
「お前ら何やってんだ?」
旧メンバーが一番乗りってどうなの?
「いや・・・気になって・・・」
「そうですよ、気になりますよ・・・」
「旦那・・・早く結果を教えてくれよ」
と小さくなっている。
こいつらは・・・結構小市民だな。
こいつらなりにプレッシャーがあったのだろう。
ちょっと笑える。
「そうか・・・俺としては・・・何とも言えんな・・・」
敢えてどうとも取れる発言をしてみた。
「ええ!」
「そんな・・・」
「マジか・・・」
と不安を助長させていた。
当然結果を知る俺としては、焦らしているだけなのだが・・・
オモロ!
もっと焦らしてやろうか?
流石にこれ以上は酷か・・・
「まあ、後十五分は待て。お前達・・・」
と言って、俺は平然と事務所の中に入っていった。
事務所の中ではゴンを始め、スタッフ達が慌ただしく作業を行っていた。
回答の結果を伝えるのは俺の仕事だが、スタッフ達は備品の準備に奔走している。
今回の結果に応じて、俺は一級合格者には、俺のお手製のサウナハットを渡すことになっている。
そのサウナハットには、〇島標に加え『FIRST』と書かれている。
そして二級合格者には、〇島標に加え『SECOND』と書かれている。
そしてそれ以外の者には、〇島標のみのサウナハットが、贈呈されることになっている。
その選別にスタッフ達は、朝から忙しくしていた。
そして何気にゴンが、一級合格者のサウナハットを被っていた。
どうやら一級に合格したことを、アピールしたいらしい・・・
俺は生温かくゴンを眺めていた。
まあ気持ちは分からなくはないが、露骨すぎないか?
そんなに誇らしいのだろうか?
よく分からん。
まあ、外っておこう。
因みに模範解答と解説は以下の通りとなっている、是非ご自身のサウナ満喫生活の参考にして貰えると嬉しく思う。
・サウナ前には全身を洗った良いか否か、またその理由は?
良い、当たり前の常識と言えるだろう。それを行っていない方は、まずはサウナへの敬意を持つべきだろう。
サウナ然り、スーパー銭湯然り、自分一人で使っている訳ではないことをまずは理解して欲しい。
誰もが気持ちよく使う為には、自分の汚れを利用前に綺麗にすることは、当たり前の常識と考えて欲しい。
誰もが、汚れの詰まったサウナや、お風呂なんかには入りたくはない。
自分が上級者との自覚があるのなら、行っていて当然の行為とも言える。
サウナマットを、汗以外で濡らすことを恥と感じて欲しい。
・サウナ前には体を拭いて水気を取った方が良いか否か、またその理由は?
良い、これも先ほどの問題に通じるものがあるが、それ以前に、身体に水分が付いていない方が、サウナのパフォーマンスが良いと言える。
それに何度も言うが、サウナマットを汗以外の水分で濡らさないで欲しいと思う。
少しでも綺麗に保ちたいとの思いがあって、当たり前だろう。
もう一度言うが、自分一人で利用している訳ではない。
外の利用者に気を配るのは、当たり前のことだと思う。
・水風呂に入る前には掛け水、又は掛け湯を行った方が良いか否か、またその理由は?
良いに決まっている。
してない者を見かけたら、ガードナーに付きだした方がいい。
そしてオズに裁かれて欲しい。
皆で使う水風呂だ、少しでも汚さないのが常識的なマナーだ。
これ以外何があるというのか?
汗を流した綺麗な体で水風呂に浸かる、常識です!
・サウナは粘れるだけ粘った方が良いか否か、またその理由は?
否、絶対にこうは考えて欲しくない。
無理は禁物である、ひと昔前にはそう考える人もいたようだが、決してそんなことは無いので止めて欲しい。
体調に合わせて、無理の無い範疇でサウナを楽しんで欲しい。
無理をしても整いは深くはならないよ。
程よく楽しんでください。
指先や足先がピリピリしだしたら危険なサインだ、今直ぐサウナ室から出て欲しい。
・サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。
サ水と麦茶である。
ただしこれは異世界での話である。
日本では、オロポであったり、リラクゼーションドリンクなどがあるので、自分の好みで選んで欲しい。重要なのは塩分とミネラルの補給ということだ。
汗をかくという事は、その分の補給が必要ということだ。
間違っても痩せる為と、水分を控えるのは止めて欲しい。
それはただの脱水症状に繋がるだけでしかない。
減量中のボクサーの様な行為は控えて欲しい。
・サウナでは大声を出しても良いか否か、またその理由は?
否、に決まっている。一人で利用している訳では無い事を理解して欲しい。大声を出すことは、他のお客様の迷惑になる行為になりかねない。
それに会話を聞かれることに抵抗はないのだろうか?
サウナ室にいる全員が、あなた達の会話に耳を傾けているのだよ?
どうしても話したい時には小声でね。
・サウナに入室する際には、入る側優先であるか否か、またその理由は?
否である。実はこれを理解している方が、日本でも少ないのが現実である。
それにこれは、諸先輩方に特にこの傾向がある。
恐らく電車やエレベーターの利用を、あまりしてこなかったからなのかもしれない。
だが普通に考えれば分かることで、出る人が居なければ、入ることができない。
従って出る側優先に決まっている。
これはあらゆる施設や、お店でも同様のことである。
それにサウナに関しては、自分のタイミングで出たいと思う為、入口を入る人で塞がれると、正直イラっとするものである。
最低限のマナーであって欲しいと、ここは切に願う。
・サウナ室は上段の方が温度が高く、下段が温度は低いか否かまたその理由は?
上段の方が温度が高い。
熱や蒸気は上の方に溜まり易い為である。
これは経験則として、サウナによく入っている者なら、分かって当然と言える。
下手な解説は要らないだろう。
・サウナは島野守が考案したものであるか否か
否である、な訳がない。俺はただの愛好家でしかない。
だが、そう思っている者が多いと、俺はこの検定で知った。
サウナは誉れ高きフィンランドの誰かが始めた、健康法の一つであるとの一説が有名だが、いろいろ調べた所、詳細は定かではない。
一つ言えるのは、フィンランドの偉人様・・・ありがとう!
貴方のお陰で、これまで何人の悩める者達が整うことが出来たのか・・・
きっとドMさん何でしょうが、恩にきます。
ということだ。
・あなたにとってサウナとは?
これは自由に書いてくれといった所だ。
あなにとってはどうだろうか?
是非じっくりと聞かせて欲しい所だ。
時間はどれだけでも作ろう。
俺にとってはどうかって?
さて何日貰おうかな?
フフフ・・・
事務所の扉を開けた。
検定を受けた者達が中に入って来る。
受付ではマーク達が、不安な顔をしてこちらを見ていた。
俺はマークの側に近寄り、
「マーク、ランド、そしてロンメル・・・お前達!一級合格だ!おめでとう!」
と回答と、サウナハットを渡していく。
「やった!」
「よっしゃ!」
「よかったー!」
とマーク達は、歓喜の表情を浮かべていた。
その後も回答とサウナハットを、受験者に渡していった。
その結果に歓喜する者、残念だと下を向く者と反応は様々だった。
一級になった者は、百十二人だった。
二級になった者は、二百十一人。
その他の者は、八十九人だった。
因みに、旧メンバーは全員一級に合格した。
レケはギリギリの点数だったのだが・・・
あいつはよりによって、サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。の問題に、
「キンキンに冷えたビールとワイン」
と書いていた。
話にならん。
これはもはや病気だな。
お薬を処方してもらってください。
そしてカインさんは、残念ながら二級となっていた。
彼はかなり落ち込んでいた。
立ち直るには、数日は掛かりそうだった。
サウナ島歴が短い彼には、少々難しかったようだ。
これを気に、サウナのマナーを学んで欲しい。
こうしてサウナ検定は終わりを迎えたのだった。
その後サウナ島では、サウナに入っていない時でも、サウナハットを被るのがトレンドとなっていた。
既にファッションの一つとして受け入れられている。
そしてその後、
「俺は上級ハンターだ!」
と宣う者達は現れなくなっていた。
それはそれで少し寂しい気がするが・・・
一級に合格した者達は、無言でサウナハットで、上級者であるとアピールしていた。
更にサウナマナーを積極的に広めようと、サウナマナーを分かっていない者達に、指導する姿が目に付いた。
これはこれで良かったと思う。
こうしてサウナマナーを広めていって欲しい。
どうやらFIRSTのサウナハットを被っている者は、一目置かれる存在となっているようで、マークに関しては。
「サウナハットが手放せない」
と言っていた。
外にもこれは手放せないという者達が、後を絶たなかった。
まあ好きにしてくれればいいさ。
サウナ検定は成功したということで、いいよね?
多分・・・あまりに自信が無いのだが・・・
まあお遊びということで・・・
勘弁してください。
そこで俺は前々から考えていたプロジェクトに、遂に動き出すことにしたのである。
それは・・・『サウナ検定』である!
ここは背景にドドン!
が欲しい所だ。
ここは目立させて欲しい。
いや、大いに目出させてくれ!
サウナビレッジが繁盛し、温泉街『ゴロウ』の移動式サウナが受け入れられた今、俺がやらなければいけないことは、これ以外には考えられなかった。
今一度、この世界にサウナとは何ぞや?と、問う必要がある。
そこで『サウナ検定』である。
内容は簡単だ。
使用上のマナーを中心とした問題を出題する。
そして、皆がどれぐらい理解しているのかを把握する。
ここはすまないが上から目線とさせて貰う。
何といっても、サウナ歴四十年以上の俺からの挑戦状だ!
手は一切抜かない。
異世界の上級サウナー達よ、掛かってきなさい!
サウナの神と謳われる俺からの試練である!
挑戦者望む!
フフフ・・・
サウナ島に激震が走った!
前々から噂はあった。
島野さんが遂に、動き出すのではないかと・・・
島野さんはこの世界にサウナを持ち込んだ第一人者であり、立役者だ。
あの人のサウナ愛は本物だ。
誰が何と言ってもそれは間違いない。
そして俺は知っている、あの人のサウナに対するマナーの徹底さは・・・時に苛烈になってしまう。
ああ、すまない。俺はマークだ。
お久しぶりです。
まあ、聞いて欲しい。
サウナビレッジがオープンしてから、かれこれ三ヶ月近くが経った。
今は慣れたこともあってか、落ち着いたものだ。
とはいっても、相変わらず予約は四ヶ月先まで一杯だ。
決して暇な訳ではないから、勘違いしないで欲しい。
大繁盛していると言える。
そもそも人材を多く揃えたから、仕事に慣れてしまえば、上手くシフトが周ることは想定済みだ。
実際に俺もだいぶ時間に余裕が出来たよ。
でもここまでの三ヶ月間は何かと大変だった。
特に大変だったのは、甘辛論争だった。
なんであんなことになったんだか・・・
恐らく震源地はメルルだろう。
あいつはハンター時代からそうだ。
とことん攻撃的になる時がある。
何があいつをそうさせるのか?
そもそもあいつは回復役だろう?
どうかしてるよ。
甘辛論争の所為で、注文が辛み一辺倒になった時には、流石に俺も焦ったよ。
可哀そうにマットも項垂れていたよ。
連日連日、辛い物ばかり作らされて・・・
見てられなかったな。
でも今では自然と落ち着いて、お客も好きな物を注文する様になった。
それでも辛い物が好まれるのは、スーパー銭湯との棲み分けの結果だからしょうがないのだが。
俺は台湾ラーメンが好きだ。
あの台湾ミンチの深みを感じる辛さが癖になる。
俺も当然予約しないと、食べることは出来ない。
要らない情報だったかな?
でも分かってくれるだろ?
あれは本気で旨い!
最高だ!
そして、遂には温泉街『ゴロウ』にまでサウナが設置されることになった。
それも移動式って・・・島野さんの頭の中はどうなってるんだ?
どうしたらそんな発想になるんだ?
俺には到底分からない、俺もサウナは好きだし、上級サウナーであるとの自負もあるが。
でもあんなサウナを思いつくなんて、島野さんはどうかしてるよ。
でも大したもので、これが温泉街『ゴロウ』で大いに流行ってるというからには、あの人の発想は間違い無かったということなんだろう。
訳が分からねえな。
そして遂にだ、島野さんが動きだした。
俺は驚愕したよ。
『サウナ検定』だ。
俺はこの時が来て欲しくはなかった。
何でかって?
分かってくれよ。
この世界の中では、俺は初期からサウナを嗜んで来たんだぞ。
その俺が検定に落ちる訳にはいかないだろう?
それにサウナビレッジの支配人なんだぞ?
もう今はプレッシャーと戦う毎日だよ。
サウナは楽しむものなんじゃなかったのか?
そうだよな?
なのに何で・・・
そうだよな・・・勝手に俺が自分でプレッシャーに、感じているだけなんだよな・・・分かってるよ・・・立場に拘るなっていうんだろ?・・・でも俺にだってプライドがあるんだ・・・分かってくれるかい?
はあ・・・
そもそも勘違いした、サウナビレッジの常連客が。
「俺は上級サウナーだ!」
なんて宣い出すからこんなことになるんだ。
それも一人や二人じゃない、それなりの数の奴らが言い出したから、質が悪い。
これは良くないと思っていたが、案の定だ。
いつもは温厚で、飄々としている島野さんだが、ことサウナに関しては人が変わってしまう。
遂に我こそは上級サウナーだと、名乗りを上げる不届き者を征伐すると、その鉄槌が下されることになったんだ。
島野さんの上級サウナー狩りだよ!
遂にこの時が訪れてしまった。
俺は巻き込まれただけなんだけどな・・・そりゃあ心の中では、俺も上級サウナーだと思っていたさ。
でも間違っても口には出さなかった。
そんなこと・・・島野さんに聞かれたら・・・言える訳がないだろう!
ちくしょう、これからランドとロンメルとサウナの勉強会だ。
試験勉強なんて始めてするよ。
はあ・・・
どうしたもんか・・・
胃が痛くなってきた・・・
うう・・・
最近は俺を訪れる人達の質が変わりつつある。
商人から常連のお客にだ・・・
理由は簡単だ。
サウナ検定の内容を知りたいと、連日遠慮の無い顔見知りの常連が、何を勘違いしたのか、事務所にまでやってくるようになった。
俺はゴンに言って、当然如く追い返すことにした。
何をそんなにまでやっきになっているのか?
まあそれだけ興味があると、前向きに受け止めているが、正直煩わしい。
我こそが上級サウナーだ!と宣言したからには、堂々と検定を受けろということだ。
いちいち探りに来るんじゃないよ、全く。
小賢しいんだよ!
まあサウナ検定とは言っても、そう大逸れた物ではない。
俺の意図としては、これを気にサウナのマナーの、更なる向上をはかるのが一番の目的で、何も本気で上級サウナーを名乗るなとは、思ってはいない。
そもそも好きに自分のことは、名乗ってくれればいい。
別に咎めるつもりは全くない。
後は副産物的に、この世界の識字率がこれを気に、少しでも上がったら嬉しい、というのもある。
現に一部の常連客が、メッサーラの学校に通い出したという噂まである。
真意は定かではないが・・・
サウナ検定の内容は実に簡単だ。
筆記問題を十問解いてもらうだけだ。
その一問を十点として、計百点満点の問題を解いてもらう。
制限時間は三十分。
その内八十点以上取れた者をサウナ一級、六十点以上取れた者をサウナ二級とする。
そんな簡単なテストでしかない。
それを受けたい者は、受けてくれというだけのことで、この一級二級というのも、俺が勝手に言っているだけで、資格でもなければ、免許でも無い。
正直ただのお遊びだ。
それをどう勘違いしたのか、特に旧メンバー達は戦々恐々としているようだ。
挙動の可笑しいあいつらを見ているのが面白いから、俺は放置しているのだけどね。
趣味が悪いって?
これぐらいいいじゃないか?
決していびっている訳じゃないからね。
フフフ・・・
因みに出題問題を並べてみるとこんな感じとなる。
・サウナ前には全身を洗った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナ前には体を拭いて水気を取った方が良いか否か、またその理由は?
・水風呂に入る前には掛け水、又は掛け湯を行った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナは粘れるだけ粘った方が良いか否か、またその理由は?
・サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。
・サウナ室内では大声を出しても良いか否か、またその理由は?
・サウナに入室する際には、入る側優先であるか否か、またその理由は?
・サウナ室は上段の方が温度が高く、下段が温度は低いか否かまたその理由は?
・サウナは島野守が考案したものであるか否か
・あなたにとってサウナとは?
とこんな感じである。
少々厭らしい問題や、身内びいきを疑う問題もあるが、大目に見てやって欲しい。
特に最後の問題に関しては、俺の趣味でしかない。
勿論どんな回答であっても、満点をつけるつもりだ。
その人にとってのサウナなんて、その人の自由でしかない。
好きに回答してくれればいい。
俺は皆がサウナをどう思っているのか?に興味があるだけでしかない。
ただふざけたことを書かれたら、問答無用で切り捨てるけどね。
まあ、お遊びである。
好きに回答して欲しい。
どんな回答があるのか楽しみだ。
フフフ・・・
そして、サウナ検定の日時が公表された。
サウナ島は異様な空気に包まれていた。
入島受付とスーパー銭湯、サウナビレッジの受付に大体的に張り紙が掲示された。
その掲示内容はこれだ。
『挑戦者求む!サウナ検定を開始する!』
加えて来週の月曜の午前十時からと午後八時から、スーパー銭湯の大食堂にて、サウナ検定を行うという旨も知らされた。
参加費は一人銀貨三十枚。
検定内容は全問題筆記試験の全十問、制限時間は三十分と、公表されたのはこれだけである。
受付はサウナビレッジの受付にて行われ、最終受付は土曜日の午後八時までとする。
この告知にサウナ島は揺れていた。
特に従業員からの動揺が激しい。
それもその筈で、実にこの識字率の低いこの世界で、サウナ検定を受けるのは、サウナ島に住む者が大半と考えられた。
まさかのオチとなりそうだ・・・
そうあっては欲しくないのだが。
だが実際に受付を行ってみると、そうでもなかった。
実に四百名近い者達が、申し込みを行ったのである。
旧メンバー達とサウナビレッジの従業員には、強制的に参加する様に伝えてある。
それはそうだろう、こいつらが受けないのは考えられない。
そして神様ズからの参加者は、なんとカインさんのみだった。
流石に五郎さんは、
「儂は止めとく、趣味じゃねえ」
と言っていた。
ランドールさんはどうするか真剣に悩んでいたが、メッサーラの二校目の完成がまじかとなっている為、時間が取れるか分からないと、止めておくと残念そうにしていた。
彼には是非参加して欲しかったのだが、こればかりはしょうがない。
もし次回があったら参加して欲しい。
まあ予定はないのだが・・・
外の神様ズも、
「儂は興味無いのう」
「俺はそういうのはいらねえ」
「私は上級とか拘らないし」
「ムフ!」
「塩サウナ検定なら考えるけど・・・」
とこんな感じだった。
遂にサウナ検定が開始された。
大食堂には緊張感が漂っていた。
押し黙る者達、貧乏ゆすりを繰り返し、睨まれている者。
複式呼吸を行ってる、旧メンバー達。
不正は許さないと、スタッフが見回りを行っている。
この時ばかりは、関係無いお客さんも息を飲んで、スーパー銭湯を利用していた。
なんだかすんません。
空気を読んでくれてありがとう。
ていうかごめんなさい。
遂に開始時間を迎えた。
「サウナ検定開始!」
裏返された用紙を捲って、真剣に向き合う受験者達。
異様な空気感が漂っていた。
俺はその光景を、後ろから腕を組んで眺めていた。
俺は俯瞰で見ていた。
いったいこいつらは何をやっているんだ?と吹き出しそうになってしまったが。
でもここは笑ってはいけない。
真剣に挑んでいる者達がいる手前、俺もふざける訳にはいかない。
にしても俺も、よくもこんな事を考えついたものだ。
我ながら笑える。
サウナ検定って・・・日本でも聞いたことがないぞ。
カリカリと問題用紙に、記入する音が木霊している。
緊張の時間が過ぎて行った。
そして三十分が経過した。
検定終了の時間を向かえた。
「終了です!記入するのを止めてください!」
とアナウンスが入る。
「なお、夜の受験者に問題内容を漏らすことは控えてください。契約魔法までは行いませんが、後日その事実が判明したら、失格となります」
と、脅しまでかけていた。
いちいちそんなこと調査する訳がないのに・・・
でもこれぐらいで丁度いいだろう。
緊張感は崩したくはない。
そして夜の部も無事に、サウナ検定は終了したのだった。
結果は三日後に、事務所まで受け取りに来るようにと、最終のアナウンスが行われた。
検定を終え緊張感が解れてきているのが分かる。
いつのも大食堂が帰ってきた。
お客様にはご迷惑をお掛けしました。
本当に申し訳ありませんでした。
またのご来店をお待ち申し上げております!
俺は今、四百人近くの回答を行っている。
はっきり言って無茶苦茶楽しい!
そして、面白い!
俺は全ての回答に真摯に向き合い、そして間違いには模範解答を添えている。
間違いをここで正し、今後のサウナマナーの向上に努めて頂きたい。
実感したのは、皆が皆、サウナを好きなんだなということ。
俺は嬉しくて溜らなかった。
正直言って、遊び気分のおふざけで行ったサウナ検定だが、こうしてみると、やってよかったと思える。
回答をすることに、とても遣り甲斐を感じる。
俺は終日回答に没頭することになっていた。
楽しいと時間が過ぎるのが早いよね。
理解が得られたら幸いです!
いよいよ結果が伝えられる時がきた。
事務所の前では既に長蛇の列が並んでいる。
皆な、緊張の趣きである。
最前列にはマークとランドとロンメルがいた。
「お前ら何やってんだ?」
旧メンバーが一番乗りってどうなの?
「いや・・・気になって・・・」
「そうですよ、気になりますよ・・・」
「旦那・・・早く結果を教えてくれよ」
と小さくなっている。
こいつらは・・・結構小市民だな。
こいつらなりにプレッシャーがあったのだろう。
ちょっと笑える。
「そうか・・・俺としては・・・何とも言えんな・・・」
敢えてどうとも取れる発言をしてみた。
「ええ!」
「そんな・・・」
「マジか・・・」
と不安を助長させていた。
当然結果を知る俺としては、焦らしているだけなのだが・・・
オモロ!
もっと焦らしてやろうか?
流石にこれ以上は酷か・・・
「まあ、後十五分は待て。お前達・・・」
と言って、俺は平然と事務所の中に入っていった。
事務所の中ではゴンを始め、スタッフ達が慌ただしく作業を行っていた。
回答の結果を伝えるのは俺の仕事だが、スタッフ達は備品の準備に奔走している。
今回の結果に応じて、俺は一級合格者には、俺のお手製のサウナハットを渡すことになっている。
そのサウナハットには、〇島標に加え『FIRST』と書かれている。
そして二級合格者には、〇島標に加え『SECOND』と書かれている。
そしてそれ以外の者には、〇島標のみのサウナハットが、贈呈されることになっている。
その選別にスタッフ達は、朝から忙しくしていた。
そして何気にゴンが、一級合格者のサウナハットを被っていた。
どうやら一級に合格したことを、アピールしたいらしい・・・
俺は生温かくゴンを眺めていた。
まあ気持ちは分からなくはないが、露骨すぎないか?
そんなに誇らしいのだろうか?
よく分からん。
まあ、外っておこう。
因みに模範解答と解説は以下の通りとなっている、是非ご自身のサウナ満喫生活の参考にして貰えると嬉しく思う。
・サウナ前には全身を洗った良いか否か、またその理由は?
良い、当たり前の常識と言えるだろう。それを行っていない方は、まずはサウナへの敬意を持つべきだろう。
サウナ然り、スーパー銭湯然り、自分一人で使っている訳ではないことをまずは理解して欲しい。
誰もが気持ちよく使う為には、自分の汚れを利用前に綺麗にすることは、当たり前の常識と考えて欲しい。
誰もが、汚れの詰まったサウナや、お風呂なんかには入りたくはない。
自分が上級者との自覚があるのなら、行っていて当然の行為とも言える。
サウナマットを、汗以外で濡らすことを恥と感じて欲しい。
・サウナ前には体を拭いて水気を取った方が良いか否か、またその理由は?
良い、これも先ほどの問題に通じるものがあるが、それ以前に、身体に水分が付いていない方が、サウナのパフォーマンスが良いと言える。
それに何度も言うが、サウナマットを汗以外の水分で濡らさないで欲しいと思う。
少しでも綺麗に保ちたいとの思いがあって、当たり前だろう。
もう一度言うが、自分一人で利用している訳ではない。
外の利用者に気を配るのは、当たり前のことだと思う。
・水風呂に入る前には掛け水、又は掛け湯を行った方が良いか否か、またその理由は?
良いに決まっている。
してない者を見かけたら、ガードナーに付きだした方がいい。
そしてオズに裁かれて欲しい。
皆で使う水風呂だ、少しでも汚さないのが常識的なマナーだ。
これ以外何があるというのか?
汗を流した綺麗な体で水風呂に浸かる、常識です!
・サウナは粘れるだけ粘った方が良いか否か、またその理由は?
否、絶対にこうは考えて欲しくない。
無理は禁物である、ひと昔前にはそう考える人もいたようだが、決してそんなことは無いので止めて欲しい。
体調に合わせて、無理の無い範疇でサウナを楽しんで欲しい。
無理をしても整いは深くはならないよ。
程よく楽しんでください。
指先や足先がピリピリしだしたら危険なサインだ、今直ぐサウナ室から出て欲しい。
・サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。
サ水と麦茶である。
ただしこれは異世界での話である。
日本では、オロポであったり、リラクゼーションドリンクなどがあるので、自分の好みで選んで欲しい。重要なのは塩分とミネラルの補給ということだ。
汗をかくという事は、その分の補給が必要ということだ。
間違っても痩せる為と、水分を控えるのは止めて欲しい。
それはただの脱水症状に繋がるだけでしかない。
減量中のボクサーの様な行為は控えて欲しい。
・サウナでは大声を出しても良いか否か、またその理由は?
否、に決まっている。一人で利用している訳では無い事を理解して欲しい。大声を出すことは、他のお客様の迷惑になる行為になりかねない。
それに会話を聞かれることに抵抗はないのだろうか?
サウナ室にいる全員が、あなた達の会話に耳を傾けているのだよ?
どうしても話したい時には小声でね。
・サウナに入室する際には、入る側優先であるか否か、またその理由は?
否である。実はこれを理解している方が、日本でも少ないのが現実である。
それにこれは、諸先輩方に特にこの傾向がある。
恐らく電車やエレベーターの利用を、あまりしてこなかったからなのかもしれない。
だが普通に考えれば分かることで、出る人が居なければ、入ることができない。
従って出る側優先に決まっている。
これはあらゆる施設や、お店でも同様のことである。
それにサウナに関しては、自分のタイミングで出たいと思う為、入口を入る人で塞がれると、正直イラっとするものである。
最低限のマナーであって欲しいと、ここは切に願う。
・サウナ室は上段の方が温度が高く、下段が温度は低いか否かまたその理由は?
上段の方が温度が高い。
熱や蒸気は上の方に溜まり易い為である。
これは経験則として、サウナによく入っている者なら、分かって当然と言える。
下手な解説は要らないだろう。
・サウナは島野守が考案したものであるか否か
否である、な訳がない。俺はただの愛好家でしかない。
だが、そう思っている者が多いと、俺はこの検定で知った。
サウナは誉れ高きフィンランドの誰かが始めた、健康法の一つであるとの一説が有名だが、いろいろ調べた所、詳細は定かではない。
一つ言えるのは、フィンランドの偉人様・・・ありがとう!
貴方のお陰で、これまで何人の悩める者達が整うことが出来たのか・・・
きっとドMさん何でしょうが、恩にきます。
ということだ。
・あなたにとってサウナとは?
これは自由に書いてくれといった所だ。
あなにとってはどうだろうか?
是非じっくりと聞かせて欲しい所だ。
時間はどれだけでも作ろう。
俺にとってはどうかって?
さて何日貰おうかな?
フフフ・・・
事務所の扉を開けた。
検定を受けた者達が中に入って来る。
受付ではマーク達が、不安な顔をしてこちらを見ていた。
俺はマークの側に近寄り、
「マーク、ランド、そしてロンメル・・・お前達!一級合格だ!おめでとう!」
と回答と、サウナハットを渡していく。
「やった!」
「よっしゃ!」
「よかったー!」
とマーク達は、歓喜の表情を浮かべていた。
その後も回答とサウナハットを、受験者に渡していった。
その結果に歓喜する者、残念だと下を向く者と反応は様々だった。
一級になった者は、百十二人だった。
二級になった者は、二百十一人。
その他の者は、八十九人だった。
因みに、旧メンバーは全員一級に合格した。
レケはギリギリの点数だったのだが・・・
あいつはよりによって、サウナ後に取る水分で最も適した飲み物を二つあげなさい。の問題に、
「キンキンに冷えたビールとワイン」
と書いていた。
話にならん。
これはもはや病気だな。
お薬を処方してもらってください。
そしてカインさんは、残念ながら二級となっていた。
彼はかなり落ち込んでいた。
立ち直るには、数日は掛かりそうだった。
サウナ島歴が短い彼には、少々難しかったようだ。
これを気に、サウナのマナーを学んで欲しい。
こうしてサウナ検定は終わりを迎えたのだった。
その後サウナ島では、サウナに入っていない時でも、サウナハットを被るのがトレンドとなっていた。
既にファッションの一つとして受け入れられている。
そしてその後、
「俺は上級ハンターだ!」
と宣う者達は現れなくなっていた。
それはそれで少し寂しい気がするが・・・
一級に合格した者達は、無言でサウナハットで、上級者であるとアピールしていた。
更にサウナマナーを積極的に広めようと、サウナマナーを分かっていない者達に、指導する姿が目に付いた。
これはこれで良かったと思う。
こうしてサウナマナーを広めていって欲しい。
どうやらFIRSTのサウナハットを被っている者は、一目置かれる存在となっているようで、マークに関しては。
「サウナハットが手放せない」
と言っていた。
外にもこれは手放せないという者達が、後を絶たなかった。
まあ好きにしてくれればいいさ。
サウナ検定は成功したということで、いいよね?
多分・・・あまりに自信が無いのだが・・・
まあお遊びということで・・・
勘弁してください。