その後、武装国家ドミニオンの面々と俺達は話を重ねた。
ゴン達も対応を軟化させて、何時もの調子に戻っている。
ゴン達はこれまでにない、異常事態に何としても俺を守ろうと躍起になっており、俺の手を患わせたくないと、考えているみたいだった。
些事は全て受け持ち、俺を前面に立たせる訳にはいかないと奮起したようだ。
俺のやる気が伝播したとも言えることだった。

有難い事ではあるが、こいつらには不向きであると思える。
その気持ちはありがたいが無理はして欲しくない。
俺はそれをやんわりと伝えたところ、ゴン達は話を飲み込んでくれたみたいだった。
そしていつもの島野一家に戻っている。
やっぱり俺達は肩の力を抜いた状態が似合っている。
肩肘を張った俺達なんて面白くもなんともない。
何処までも自然体な俺達が丁度いいのだ。
全く・・・やれやれだ。
でもありがとうな。

武装国家ドミニオンの現状について話をすると、概ねクモマル達の報告通りだった。
その報告は緻密で正確この上なかった。
但し評価が分かれるのは国王のベルメルト・ダイガストン・ドミニオンが優秀であるかどうかということだった。

正直言って、俺の眼からは優秀そうな面は見受けられなかった。
だが外の者達からの評価は高いのだから、何かしら優秀な点があるのかもしれない。
そう願いはするものの、俺からは自信の無い中年の男性としか映っていない。
そこで俺はベルメルトを試してみることにした。
こうすることで何かしらの評価が出来るのではと考えたからだ。
かつてルイ君に投げかけた質問と同様の質問をしてみることにした。

「なあ、ベルメルト国王。君の目指す国造りとは何なんだ?」
俺からの問いかけに驚きを隠せないベルメルト国王だった。
逡巡した後ベルメルト国王は言った。

「私は傑物でもなければ、国を引っ張るほどの力を有してはおりません。しかしながら私の周りには優秀な者達が多数います。彼らの話に耳を傾け、最善と思える施策や政治を行っていければと私は考えております」
なるほど、この考えが一定の評価に繋がっているのだろう。
分かり易く言えば昔のルイ君に似ている。
専門家に任せようという姿勢だ。
それであるならば配下としては働き甲斐はあるし、遣り甲斐もあるだろう。
それにベルメルト国王は聞き上手だ。
ここに高評価のポイントがあると思える。

というのも、よくしゃべる人は面白いと思われることが多いが、その反面煩いであったり、信用できないとか胡散臭いと思われることが多い。
しかし、聞き上手な人はいい人と思われがちだ。
この差は大きい。
その所為もあってか、信用に値すると評価される傾向にあるのだ。
人は話を聞いてくれると、この人はいい人だと思ってしまう。

そんなことを気づいている人は少ないだろう。
詰まるところ話し上手よりも聞き上手の方が、評価は高いのである。
彼は本能的に自分の能力を理解した上で、そう振舞っているのだろう。
ベルメルト国王の評価が高いのも頷けるものだ。
だが、統治者としては物足りない。
評価としてはどうしてもそうなる。

スターシップと比べられてしまうからだ。
その大きな違いは行動力でしかないのだが、これは身体に沁み込んでいる部分だから、今日の明日にどうにか出来ることではないだろう。
ここでお節介を焼くほど今の俺には時間がない。
緊迫した現状でなければ、ルイ君の様に話を重ねてみたいところだが、残念ながら今はそんな時間は無い。
じっくりと話をしてみたいところではあるのだが、此処はしょうがない。

そして、クモマル達アラクネ一同からここぞとばかりに、どしどしと報告が上げられてきた。
『ドミニオン』の裏側は根深い。
どんどんと挙げられる報告には耳を疑うばかりだ。

それを俺は包み隠すこと無く全てを詳らかにした。
ベルメルト国王含めて大臣達がざわついている。
中には信じられないと、首を振っている者もいた。
それぐらい彼らにとってはセンセーショナルな出来事であったみたいだ。
だがこれが現実なのだ。
受け止めざる得ない。
彼らにとっての覚悟の時間が始まった。

「多くの貴国に対しての情報が集まってきた。その中での首謀者を既に俺の手の者が連行している。準備はいいか?」
王の間に緊張が走る。
まだ、俺は王の玉座に座ったままだ。
そこに一人の貴族が連行されてきた。
後ろ手に腕を掴まれて喚いている。
両手首をアラクネの糸で縛られていた。
これは解くことは出来ない。
アラクネの糸は頑丈だからね。
俺ならさっさと抜けられるけど、そんなことはどうでもいいよね。

「放せ!この無礼者が!儂を誰と心得る!儂はイセ侯爵であるぞ!ええい!護衛の者を寄越せ‼」
大きな体躯の猫背の男性が連行されてきた。
お腹がポッコリと出ている様が、不摂生を物語っている。
威張り散らしているが、誰も取り合っていない。
まるでピエロだな。
こいつもハセと変わらない。
哀れで下種な貴族だ。
俺は既に残念な気持ちになっていた。

顔を見ただけで分かった。
こいつも地位に肩で風を切っていた者なのだと。
何より眼が曇っている。
そして天井が薄い・・・禿と言った方が分かり易いか。
不気味なぐらい眼が曇っていた。
どうしたらこんなに眼が曇れるのか?
眼を会わせることが気持ち悪いぐらい嫌だった。
真面に眼を見たくないと本能的に思ってしまうぐらいだ。

「イセ侯爵、貴様何をしてくれたんだ‼」
大臣の一人が血相を変えてイセを糾弾しようとした。
その鼻息は荒い。

「まあ待て、言い分を聞いてみようではないか」
他の大臣が諫める。
だが、その視線は冷ややかだ。
イセを糾弾していることに変わりは無い。
他の大臣達も色めき立っていた。
どうしてやろうかと、全員が肩を回している状態だ。

俺の前にイセ侯爵が投げ捨てられた。
その様は捨てられたゴミの様だった。
イセは気に入らないのかこちらを睨んでいた。
それを俺は冷ややかに眺めていた。
ゴミでも主張するんだなと変な関心を俺は抱いていた。
でもそれに意味は無い。
そしてイセが吠える。

「これはなんの狼藉か‼儂にこんな扱いをするとは?ベルメルト国王‼これを許していいのですか?それに貴様は誰だ‼玉座に腰かけるなど、不敬であるぞ‼」
イセの慟哭が木霊する。
ああ、煩い・・・声だけはデカいな。
態度もか?・・・どうでもいいか?

「黙れ犯罪者!お前は既に我らの手に落ちている。観念するのだな‼」
クモマルが珍しく声を荒げていた。
何処までも温厚なクモマルがこんなに感情を剥き出しにしているなんて・・・
あり得ないことだ。
こいつは相当な悪党なのだろう。
それだけでも分かるというものだ。
もうここで牢獄に放置してもいいんじゃないか?
って訳にはいかないよね。

「何を言っている!儂は何も悪い事はしていない!」
イセはこの場においても騒いでいる。
やっぱり騒ぐんだ・・・
そこに正義感の強いゴンが追い込む。
顔が振れようかという程の距離感で、不敵な笑いを浮かべてゴンが言い放つ。

「お前は何をやったというのですか?それを問わずともその顔が既に悪者であることを物語っていますがね」
ゴン・・・正解です!

「う!・・・」
機先を制されてハセは言葉を失っている。

「イセ侯爵、心当たりは無いと申すのか?」
大臣の一人が問いかける。

「フン!あろうはずもない!」
当たり前とイセが答えた。

「よく言う、この悪党め!」
クモマルが締め上げた腕を更に締め上げた。

「痛ててて!離せ!離せ!くそっ‼」
苦悶の表情でイセが悶える。
そんなイセを俺は無視した。

「クモマル、詳細を話せ」
クモマルは俺に跪く。
その様に大臣達も押し黙った。
中には俺に跪く者もいた。
王の間が静寂に包まれた。

「ハッ‼申し上げます。この者は女性の奴隷を三名従えており、その契約も無理やりさせた物になっております。恐らく慰み者にされていたのだと推察します。契約書を確認しましたが、一方的なものであり、断じて看過できるものではありません。さらに労働奴隷として獣人を数名奴隷としております」

「何を言う!契約は一方的なものなどでは無い、本人や家族が了承の上に結んだものだ。どこにそんな証拠があるというのだ!」

「証拠は挙がっている、この者は重税を課した上で、支払えないと奴隷として契約する様に迫っていたと証言は多数あります。なんなら証人全員を連れてこれますが如何なさいましょうか?」
クモマルは強気だ。

「くっ!そんな証人など、どうとでも捏造できるだろうが!それにそんなことが出来る訳がないだろう!証人全員連れてくるだと?あり得ないろうが!」

「ほう?そうですか。ならばその言葉、決して飲み込まぬように!」
まだイセは余裕を崩さない。
契約魔法で縛っているのだから、自分にとって不利益な証言は出来ないだろうとでも考えているのだろう。
だがその考えは甘い。
契約魔法をゴンから教わったアラクネ達は既に契約を無効にしているはずだ。
それだけでイセに不利な証言はいくらでも出来るだろう。
ここからはもう茶番劇だ。

その後イセはどんどんとその表情を崩していくことになる。
クモマルが合図をすると、ぞろぞろと人々が王の間に押し寄せた。
イセの表情が青ざめる。
慰み者にされていた奴隷の女性達、無理やり契約書にサインをさせられたその家族。
奴隷となっていた獣人達。
その他商人風の者や、貴族風の者もいた。
一部の者はイセと同様に後手に縛られていた。

そしてその中にはハセがいた。
心の折れたハセは、全ての悪事に関して自白していたのだった。
その大半の悪事の指示はイセからもたらされたものであり、正にハセは生き証人となっているのであった。

「なんと、これほどまでの者達が迫害を受けていたというのか・・・それに悪事に加担していたと・・・」
ベルメルト国王は眼を白黒とさせていた。
これが現実だ。
話をよく聞く国王といっても、それは一部の者達でしかない弊害がここにはあった。
自分の国の現状を把握できていないことに羞恥心を感じているのだろう。
ベルメルト国王は顔を真っ赤にして、イセを睨んでいた。
今にも掴み掛らんという程に。

「ベルメルト国王、はっきり言っておくが、これは氷山の一角に過ぎない。イセはこの国の悪事の中心にいた人物だが、それ以外にも悪事を働く者達は多数いる。心することだな。それにイセとハセは贈収賄や横領なども行っていた証拠も摘発している。あとついでといっては何だが、この国は奴隷制度を認めているのか?だとするならば、今直ぐ廃止しろ。これは俺の命令だ!いいな‼異論は認めない!」
俺の発言を受けてベルメルトは表情を硬くした。
そして跪く。

「畏まりました、仰せの儘に」
ベルメルト国王は頭を下げた。
それに倣って大臣達も跪き頭を下げる。
その様にイセは顔を歪めていた。

「それで、イセとやら。これだけの証人がいるのだが、まだ何かいうことがあるのか?」
イセはワナワナと震えていた。

「ハセ・・・裏切りやがったな・・・覚えておれよ・・・」
ここにきてイセはまだ強気な姿勢を崩さない。
こいつは何処までも腐っているな。
なんでこの後に及んでそんな態度でいられるのだろうか?

「イセ様・・・そんなことを言っていられる状況ではありません。すでに私達は詰んでおります」
ハセは悲壮感で打ちひしがれていた。

「なっ!・・・そんな馬鹿な・・・」
ベルメルト国王が前に出てきた。
イセを冷ややかに見下している。
そのベルメルトの態度にやっとイセは慄く。

「イセ侯爵、今直ぐ全ての所有する奴隷を解放せよ。そしてそなたとハセ伯爵の領地は没収とする。貴族の地位も返上し、ハセは平民として暮らすがよい。イセ、お前は国外追放とする‼この後一切この国に足を踏み入れることは許さぬ‼」
ベルメルトの王命である。
これは何をしても覆すことはできない。
がっくりと項垂れるイセ。
ハセは諦めの境地にあったのだが、国外追放されなかっただけましということだ。
自白をしたのが考慮されたということか。
でもある意味こいつの人生は終わりを告げたのかもしれない。
この先はこいつの頑張り如何だ。
国王の護衛が現れて、イセとハセ、そして後ろ手に繋がれている者達が連行されていった。
この後、詳細な沙汰が下されることになるだろう。
一先ずこれで今回の騒動は決着となったのであった。



今回の情報集めの中で、陶芸の神ポタリーに繋がる情報が寄せられた。
俺は王城でその報告を受けることになった。
例の騒動が終わった後、ベルメルトから懇願する様に、王城に滞在して欲しいと言われてしまったのだ。
俺としては、一度『シマーノ』に戻って、情報を纏めたいところだったが、あまりに必死に誘われてしまった為、無下には出来なかった。
それにもう少しこいつには関わらないといけなとは思っていた。
俺のお節介が顔を出してしまったみたいだ。
断ることは出来たが、俺はそうしなかった。
何処までもお人好しと思われるかもしれないがここは許して欲しい。

裏側ではクモマルが中心になって、ドミニオンの大臣達と会議を行っている。
集めた情報を基にどうやって悪党どもを検挙するのか、打ち合わせを行うとのことだった。
この先続々と闇に紛れている者達が連行されることになるだろう。
流石はクモマルだ。
クモマルに任せておけば、闇に紛れている者達を炙り出すことは容易いだろう。
それにクモマルはやる気に満ちていた。
ここで活躍すれば俺に恩を返せるとでも思っているのだろう。
なんて可愛い奴だ。
お前はもう充分に家族と言える存在だってのに。

島野一家は懇談会として、ベルメルト国王に食事を振舞われていた。
相手はベルメルト国王とその家族が同席している。
ベルメルト国王は多少緊張が解けているようだが、奥方と二人の息子達は緊張しているのが分かる。
特に息子の二人に関してはガチガチに緊張していた。
俺達の事をどう聞いているのか知らないが、食事の席ぐらい楽にして欲しいものだ。
今にも吐き出すのではないかと嗚咽を漏らしていた。
そして下の息子に関してはギルに釘付けだ。
ドラゴンに興味でもあるのだろう。
恐らく食事が終わったらギルが構うことになるだろう。
あいつは世話焼きだからね。

ベルメルトは自慢げにしていた。
命一杯のもてなしなのだろう。
ボア肉のステーキがメインのコース料理だった。
料理の評価としては、まあ無難だなというところ。
少々薄味なのが残念だ。
どうにもこの世界の調味料には物足りなさを感じる。

だがとても眼を引く物があった。
それは皿やカップなどの陶芸品だった。
とても品があって、繊細さを感じる品の数々だ。
ゴンガスの親父さんが造る陶芸品は実用性に特化している物が多い。
割れない様に頑丈にしてあったりとか、軽くしたりとかだ。
現に今では南半球では陶芸品は少なくなり、リザードマンの鱗を使った皿やカップ等が主流になっている。
それはそれでいいのだが、この陶芸品はそれとは違う良さがある。
芸術品として飾っておきたいような、そんな品々なのだ。
場を煌びやかにする様な、そんな雰囲気を纏っている。

島野一家は作法なんてものはお構いなしだ。
ギルがいつものごとくお代わりを主張しガツガツ食っている。
ノンはだらしなく食べ、ゴンに注意されていた。
エルはマジックバックから調味料を取り出して、味付けを変えている。
俺は微笑ましくそれを眺めていた。
俺達にとってはいつもの光景だ。

でも・・・ベルメルト・・・なんだかごめん。
マイペースなのが島野一家の売りなんでね。
流石に味変は無礼だったか?
でも俺も味変したかったな・・・

「なんだかすまないな、ベルメルト」
もうここからは呼び捨てだ。
島野一家のこの様を見ていると、どうでもよくなってきた。
俺の発言にニコニコと受け答えするベルメルト。
呼び捨てにされたことが嬉しいらしい。

「いえ、好きになさってください。この様にしていられるのも、島野様方のお陰なのです。ドミニオンの膿を出すことができたのです。こんな食事程度で恩返しが出来たとは思っておりません」

「そうか、この後の沙汰は全部お前達に任せる。いいな?」

「はい、寛大な御処置痛み入ります」
ベルメルトは頭を下げた。
さて、本題に入ろうか。

「ベルメルト、まずは陶芸の神ポタリーについて教えてくれ」

「喜んで!」
ベルメルトは喜々として答えていた。
居酒屋かよ・・・

「まず、今召し上がっていただいている。料理の器や皿等の陶磁器は全てポタリー様の造られた品です」

「だと思ったよ。この品々はとても品がある。是非手元に置きたい一品だ」

「お褒め頂き光栄です。ポタリー様の造られる品々はどれも一級品です。このドミニオンの誇りでございます。ドミニオンの産業の中心は陶芸品であると言っても過言ではありません」

「そうなのか、確かにここまでの一品であれば頷けるな」
俺も家に飾りたいぐらいだ。

「はい、実際ドミニオンはこの陶磁器によって経済が支えられているのです。ドミニオンは山を切り崩した国であることから、あまり農場にとって良質な土壌をしていないと聞いたことがあります。実際農業は下火で、自国での生産量だけでは自国を賄いきれず、輸入で凌いでいるのが現状です。そこでポタリー様の陶磁器が輸出されることによって、経済が潤っているのです」
なるほど、ここはアイリスさんの出番かな?
まだゴーサインを出すには早いけどね。

「ポタリー様ですが、とても勝気な女神様です」
へえーそうなんだ。
いぶし銀のおじさんだと想像していたよ。
女神とは少々以外だ。
それにしても勝気な性格なんだな。
そう聞くと、女神でも職人肌なのが何となく頷ける。
早く会いたいものだ。

「それで?」

「ポタリー様は、いつしかこのドミニオンに住み着きました。ポタリー様曰く、この土地の土壌がとても陶磁器に向いているということでした、それに釉薬が揃いやすいと仰ってました。私にはいまいちよく分かっておりませんが・・・」
農業には適していない分、陶磁器には向いている土壌ということなのだろうか?
これはアイリスさんに聞かないと分からないな。
でもあの人ならそんなことに関係なく、農業を盛んにしてしまいそうな気がする。
今では普通に田んぼやハウス栽培もお手の物になっているからね。
あの人に掛かれば、南極のような極寒の地であっても作物を育ててしまいそうな気がする。
それぐらいアイリスさんの農業に対する熱意は半端ない。
それに今ではアースラ様もいるしね。

「そうか、それでポタリーさんはどれぐらいドミニオンにいるんだ?」

「はい、実に五十年近くは駐留なさってくれております。この先もずっと居て欲しと私達も願っておりました・・・でも・・・」
ベルメルトは視線を落とした。
落胆しているのが丸分かりだ。

「俺達が必ず救い出す、安心してくれていい」

「本当で御座いますか‼」
ベルメルトが目を輝かせる。

「ああ、約束してもいい」

「なんと・・・」
ベルメルトは涙を流していた。

「ありがとうございます・・・」

「いいから泣くな!お前国王だろう?簡単に人前で泣くんじゃないよ」
はあ、困った奴だ。
でも分からなくはない。
これまでこいつなりに頑張って来たのだろう。
それをいきなり現れた者が簡単に問題を解決し、更に最たる問題を解決すると約束したのだ。
こんなに心強いことは無いだろう。
時間が許せばもっとこいつに関わってやりたいが、そうともいかない。
今は要点だけでも教えておいてやろうと思う。

その後、ポタリーさんに関してと、国政に関する相談を受けて、俺とベルメルトは夜を明かすことになった。
久しぶりの徹夜だった。
案の定ギルとノンは息子達と仲良くなり、意外にもエルとゴンは奥方と打ち解けていた。
こうしてドミニオンでの夜は更けていったのだった。