福は顔を洗い、身支度を整えた。

今までの幸は、メガネをかけていたらしい。
でも、今日からの幸は、メガネはやめる。
そして、福はコンタクトレンズを探し出し、それをつけた。

あとは、髪形だ。
幸は、確か、長い髪を一つに結ぶだけだった。
福は長い髪をきれいに梳かし、サイドの髪を少し取り分け、後ろでねじって可愛いらしいヘアゴムで結んだ。
そして、幸の持っている数少ないコスメの中から色付きのリップクリームを見つけ、軽くくちびるになじませた。

福は制服を着た自分の姿を鏡に映して見る。


「幸、可愛いよ」


福は本当に嬉しかった。

私も、もし、元気に生まれて元気に育っていれば、こんな幸のような女の子になっていたのかな…
ダメダメ、神様との約束を忘れちゃダメ。
自分の運命を悲観しないこと、何を見ても、何を聞いても、もっと生きたかったって思わないこと。

福は鏡に映る自分に、笑顔でそう言い聞かせた。