「ここで僕を見た時の弓維さんが、あまりにも可愛かったからかな」
「っ! ふざけないで」
「本当だよ。目を輝かせて、「綺麗」って言ってくれたんだ。皆が気味悪がる、この容姿を。両親以外で褒めてくれたのは、後にも先にも、弓維さんだけ。だから僕にとって特別なんだよ」
確かに肇さんの容姿は変わっている。けれどそれだけだ。
普通の容姿をしていても、中身は人の皮を被った悪魔のような人たちは沢山いる。
笑顔で近づいて来て、平気で嫌味と皮肉を浴びせて、満足して去っていく者。通りすがりにわざとぶつかってくる当たり屋。媚びて金をせびってくる腰巾着。
肇さんは、そのどれでもない。
「綺麗なものを綺麗と言っただけよ」
「……だけど、どうしてこの色をしているのか、聞いてこないよね」
「綺麗なものに、理由は必要ないから」
「はははは。弓維さんらしいね」
そんなにおかしなことだったかな。本当のことなのに。
「実はこれ、先祖返りなんだ」
「先祖、返り?」
「うん。父方のご先祖様に竜神様がいらっしゃってね。僕の髪と目はその影響なんだ」
「竜神、様!?」
予想外の話に、目が点になった。
「あれ、この話、苦手だった?」
「ううん。内容が内容だけに、もの凄く驚いてしまって」
「あっ、そっか。それじゃ、この話はここまでにしようかな」
「えっ! ここまで話しておいて?」
まだあるのなら、聞きたい!
「はははは。いいよ。それじゃ多分、次に気になっている万年筆について」
「そう! あれ、どういう理屈なの?」
「竜神様から受け継いだ力を、自分なりに使ってみたんだ。弓維さんと今後も話すにはどうしたらいいのか考えて。手紙ならいつでもやり取りができるからいいと思ったんだけど、筒鳥家の人間とやり取りしていることがバレたら、弓維さんの立場が困るのは、目に見えて分かっていたし」
「だから、肇さんとしかやり取りができなかったのね」
「うん。因みに父さんは竜神様の力を持っていない。この容姿のせいなのか、僕だけが竜神様の力を持って生まれてきてしまったんだ」
だから余計に、周りの視線が気になっていたのね。自分の容姿が、誰とも同じじゃないから。
「勿体ない。綺麗な容姿に、力まであるのに、疎まれてしまうなんて」
「ありがとう。今は平気だよ。弓維さんがいるから。だから、離婚したいだなんて言わないで」
「あ、あれは!」
「もう、考えていない?」
肇さんがグッと顔を近づける。体をのけ反ろうとしても、背中に触れる腕はビクともしない。
これも竜神様の力なのかな。ヒョロッとしているのに力強く、何時間でも私を横抱きにできるのは。
「うんって言ってくれたら、祝言をあげよう。やり直させてほしいんだ」
「祝言をあげている時間もないし、お金が勿体ないわ」
「勿体なくないし、落ち着いてからでいいから。それとも、そんなに僕と夫婦になるのが嫌?」
「そんなことは言っていないわ」
私がそう言うと、ぱぁっと表情を明るくさせる肇さん。もう、なんなの、この可愛い生き物は。私の旦那か!
「なら、好き? 僕はずっと弓維さんが好きだよ。愛している」
「卑怯です! こんなところで、こんな顔して言うのは」
「卑怯じゃない。ほら、弓維さんも」
言って、と促される。それも嬉しそうな顔で。
あぁぁぁぁぁ! 私が肇さんの顔に弱いのを知っているくせに!
「好きです! 大好きです!」
恥ずかし過ぎて、私は言い終えると、肇さんに抱き着いた。
「ありがとう、弓維さん。今度は絶対に間違えないからね。たっぷり甘やかして、幸せにしてあげるから」
私にはもう、それに答えるだけの精神を持ち合わせていなかった。
「っ! ふざけないで」
「本当だよ。目を輝かせて、「綺麗」って言ってくれたんだ。皆が気味悪がる、この容姿を。両親以外で褒めてくれたのは、後にも先にも、弓維さんだけ。だから僕にとって特別なんだよ」
確かに肇さんの容姿は変わっている。けれどそれだけだ。
普通の容姿をしていても、中身は人の皮を被った悪魔のような人たちは沢山いる。
笑顔で近づいて来て、平気で嫌味と皮肉を浴びせて、満足して去っていく者。通りすがりにわざとぶつかってくる当たり屋。媚びて金をせびってくる腰巾着。
肇さんは、そのどれでもない。
「綺麗なものを綺麗と言っただけよ」
「……だけど、どうしてこの色をしているのか、聞いてこないよね」
「綺麗なものに、理由は必要ないから」
「はははは。弓維さんらしいね」
そんなにおかしなことだったかな。本当のことなのに。
「実はこれ、先祖返りなんだ」
「先祖、返り?」
「うん。父方のご先祖様に竜神様がいらっしゃってね。僕の髪と目はその影響なんだ」
「竜神、様!?」
予想外の話に、目が点になった。
「あれ、この話、苦手だった?」
「ううん。内容が内容だけに、もの凄く驚いてしまって」
「あっ、そっか。それじゃ、この話はここまでにしようかな」
「えっ! ここまで話しておいて?」
まだあるのなら、聞きたい!
「はははは。いいよ。それじゃ多分、次に気になっている万年筆について」
「そう! あれ、どういう理屈なの?」
「竜神様から受け継いだ力を、自分なりに使ってみたんだ。弓維さんと今後も話すにはどうしたらいいのか考えて。手紙ならいつでもやり取りができるからいいと思ったんだけど、筒鳥家の人間とやり取りしていることがバレたら、弓維さんの立場が困るのは、目に見えて分かっていたし」
「だから、肇さんとしかやり取りができなかったのね」
「うん。因みに父さんは竜神様の力を持っていない。この容姿のせいなのか、僕だけが竜神様の力を持って生まれてきてしまったんだ」
だから余計に、周りの視線が気になっていたのね。自分の容姿が、誰とも同じじゃないから。
「勿体ない。綺麗な容姿に、力まであるのに、疎まれてしまうなんて」
「ありがとう。今は平気だよ。弓維さんがいるから。だから、離婚したいだなんて言わないで」
「あ、あれは!」
「もう、考えていない?」
肇さんがグッと顔を近づける。体をのけ反ろうとしても、背中に触れる腕はビクともしない。
これも竜神様の力なのかな。ヒョロッとしているのに力強く、何時間でも私を横抱きにできるのは。
「うんって言ってくれたら、祝言をあげよう。やり直させてほしいんだ」
「祝言をあげている時間もないし、お金が勿体ないわ」
「勿体なくないし、落ち着いてからでいいから。それとも、そんなに僕と夫婦になるのが嫌?」
「そんなことは言っていないわ」
私がそう言うと、ぱぁっと表情を明るくさせる肇さん。もう、なんなの、この可愛い生き物は。私の旦那か!
「なら、好き? 僕はずっと弓維さんが好きだよ。愛している」
「卑怯です! こんなところで、こんな顔して言うのは」
「卑怯じゃない。ほら、弓維さんも」
言って、と促される。それも嬉しそうな顔で。
あぁぁぁぁぁ! 私が肇さんの顔に弱いのを知っているくせに!
「好きです! 大好きです!」
恥ずかし過ぎて、私は言い終えると、肇さんに抱き着いた。
「ありがとう、弓維さん。今度は絶対に間違えないからね。たっぷり甘やかして、幸せにしてあげるから」
私にはもう、それに答えるだけの精神を持ち合わせていなかった。