車に乗せられ、知らない景色が流れるのが車の窓から見える。
そして車が止まった。
そこはとても古そうで、学校の校舎のような、何かの工場のような、どっちにしろ女の子には初めて見る景色だった。
出入り口には、とてもよじ登れないくらい立派な大きい塀に囲まれていて、これまた立派な門があった。
その門を通って建物の中に入る。
そして黒ずくめの男の人達に連れてこられたのは、横にズラっとたくさんの檻が並んである薄暗い場所だった。
狭い檻の中には子供が大体·····10人ずつほどだろうか。入れられていた。
その檻がある廊下を通った時、自分よりも年下であろう子供たちは、助けてと泣いて叫んでいた。
檻の鉄格子の隙間から手を出してこちらに訴えかける。
ガタガタと鉄格子を動かしてそこから出ようとしている。
女の子よりも幼い子供達は人が通る度に誰かに助けを求めているようだった。
女の子はそんな状態を見ても無表情で、その長い廊下を歩いた。
自分に助けを求めてきても何もできない。
何もしてあげれない。
泣いて叫ぶだけ無駄·····。
そして一番端の檻まできた。
一番端の檻にはまだ誰もいなかった。
中に入るよう言われ大人しく言われた通りに従った。
すると黒ずくめの男は気味悪く笑って「すぐにお友達連れてきてやるからな」と言って元来た道を戻って行った。
自分には関係ないと、そう思い隅の方でいつも家でそうしていたように冷たい床に横になって、丸まって、そのまま目を閉じ、眠りについた。
もう実の親に罵声を浴びさせられない。
もう虐待されることもない。
少なくとも、この檻が閉まっている限り、暴力を振るわれることはない。
そう思ったのか、女の子は久しぶりにぐっすり眠れた。