「あー俺だめかも·····」
そう言ったのは赤宮。
「俺ももちゃんの様子見に行ってきてもいいっすか?」
赤宮は桃子のことが心配で心配でたまらなかった。
1人で泣いているんじゃないか。
1人で苦しんでいるんじゃないか。
心配だった。
勿論それはみんな同じ。
「俺も行ってもいいですか?」
青葉も桃子の様子を見に行きたいと言い出した。
しかし黒神は
「だめだ。まだ1日しか経ってねーだろ。それに見つかったらどうする。
·····ももはもう大丈夫だ。里親のことはちゃんとよく調べた。あの夫婦ならももを任せられる。だから心配はない。」
見にいくことを止めた。
そんなことをしたらまた桃子と関わりを持ってしまうから。
見るだけなんかできるわけがない。
わかっている。
もし迷子になんかなったら絶対に助けるし、もし悪い奴らに絡まれたら相手をボコボコにして助けてしまう。
見守るだけなんかできない。
桃子に見つからないようになんかできない。
少しでも困っていたら助けに入ってしまうから·····。
「(俺だってそうするだろう。)」
そう言われて渋々赤宮と青葉はトボトボと仕事に戻った。
そんな二人を見て白洲は黒神に少しからかうように話しかける。
「ももちゃん居ないとなんか静かだね」
「別にあいつそんな喋んねぇーだろ」
「そうじゃなくて、周りが、ね」
「·····」
「だって、ももちゃん居た時はみんなももちゃーんってなってたでしょ?部下達もこっそりお菓子とかあげてたみたいだし」
そう言ってドアの前で待機している部下達を見る。
「(ビクッ!!)」
バレないようにこっそり上げているつもりだったのにまさかバレていたとは、部下達は冷や汗がとまらない。
「それに、黒神も·····」
また黒神に視線を戻す。
「俺がなんだ」
「寂しんでしょ?」
「別に俺は·····」
「それ、さっき終わったやつでしょ?同じのやってるよ?」
「っ!?」
黒神は書類を確認すると先ほど作った書類と同じものをまた作っていた。
「ね?」
「……」
何も言えない黒神。
「僕も寂しいなぁ。またアイス一緒に食べに行きたかったのに」
「……」
黒神組のみんなは桃子ロスだった。
それを少しでも軽減するために、桃子がこれまで撮ってきたものを見ることにした。
パソコンに繋いでカメラの中のデータをチェックした。
するとそこには、黒神や、白洲、赤宮、青葉の幹部達、その他にも汐田佐藤などの部下達までもの写真があった。
桃子はこっそりいろんな写真を撮っていた。
何気ない日常を。いつも通りの日常を。
よく見ると、桃子が写っているもの一枚しかなかった。
それはそうだろう。撮っていたのは桃子自身なのだから。
そのたった一枚の、桃子とみんなが写っている写真を黒神達は印刷して、大切にしていた。
ただ、カメラを黒神に渡したのでその写真を桃子は持っていなかった。
癒しが欲しい時にみんなはそれを見るようになっていた。
夢の国で撮った、桃子との写真を、みんなはそれぞれデスクの上に飾っていた。
そこに書類を届けにきた部下は、そのデスクの上にある写真立てを見つめる。
こちらからは中身の写真は見えず、写真立ての後ろしか見えないのだが。
その写真立てを見ながらふと思う。
あの頃は楽しかったなと。