「「いらっしゃい!」」


そう出迎えてくてたのは、初めて会った、新しいお母さんとお父さん。


「……」


桃子は黙り込んでしまう。


運転していた部下がトランクに入れてあった桃子の荷物を全て玄関まで運んでくれた。

そして、お元気でと頭を下げて、すぐに帰ってしまった。


「疲れたでしょ、さぁ、こっちに座って」


そう言ってリビングのソファーに座るよう手招きする。


「あ、あの·····お、おか、ぁ、」

「いいのよ、無理しないで。呼びたいと思ってくれてから呼んでくれたらいいの」

「そうだよ、ゆっくりでいいからね」


30代くらいの、笑顔がとても似合う新しいお母さんとお父さんは優しく、慣れるまで待ってくれると言ってくれた。


「ここも桃子ちゃんがこのお家に帰りたいと思ってくれたら“ただいま”って言ってくれたらいいのよ」


「その時は私たちも“おかえり”って出迎えるわ」

「無理しなくていいからね」


優しく笑って桃子の手をとって安心させるように手を撫でてあげていた。

そのてはとても暖かかった。

黒神たちとは違う。
手の大きさも、触り心地も全てが違う。


「ぅっ、うっ·····ズンっ」

 
「れんくん、しーちゃん·····スンっ、みーや、あおちゃん、みんな·····」


桃子は1人、新しい家で泣いていた。


夜ご飯も食べ、お風呂にも行き、寝る前に両親と少し話をした。今後について。

学校の転入手続きをして、新しい学校に行くことになるということを話していた。


前も学校には行っていなかったものの、学校には在籍していた。

ただ、名前だけ。


病気だと言ってうまいこと誤魔化していた。

母親·····“元”母親は外面だけはよかった。

家に訪ねてきた担任に泣いて心配しているように見せたり、あえて今日は体調がいいみたいと言って笑顔を見せたり。

女優にでもなれるんじゃないかというくらい、本当に上手いこと誤魔化していた。


学校についての話が終わり、寝るために桃子の、用意してもらった自分の部屋へ。


両親はしばらく一緒に寝ようと言ってくれたのだが桃子が1人がいいと言ったのでそうすることに。


1人になった瞬間、涙が止まらなくなってしまった。

今日みんなと別れる時も泣いたのに。

あんなに泣いたのに。

まだ足りないみたいだ。

 
「ダメだ·····。止まらない·····。どうしよう·····。」


「みんなに·····会いたい·····」


自分の意思じゃもうどうしようもできない。止めることができない。


 ・
 

泣いちゃいけないのに。
れんくんにまた怒られちゃう。

会いたい·····。会いたいよ·····。

れんくんはあー言っていたけど、もう会えないんだろう。

だって、れんくんたちは普通の人たちとは違う仕事をしているから。
みんな口には出していなかったけど、危ない仕事をしている。

それは最初からわかってた。

だって、助けてもらったあの日·····拳銃を持っていたから。

だから私を養子に出したんだ。
自分たちのところにいたらダメだって思ったから。

だから·····もう、会えない。わかってる。

頑張るって決めたのに·····
 

涙を堪えようとするあまり、呼吸がうまくできない。
 

苦しい。胸が苦しい。ヒッ·····
もっとみんなのそばに居たかった。

ヒッ、どうしよう、これから·····ぅっ、どうしよう·····。

私はこれからやっていけるのかな。

れんくんも、しーちゃんも、みーやもあおちゃんも誰もいない。

ダメだ。ヒッ、みんなの名前を出しただけでももう·····ヒッ耐えられない。

たった2ヶ月だったけど、ぅっ、家族同然だった。

寂しい。苦しい。この家を飛び出してしまいそうになる。

あぁ、今日は寝れないな。
みんなといた時はあんなにぐっすり眠れていたのに·····。

 
それからというもの、桃子は夜に1人になった瞬間、寂しさから泣いてしまうようになった。

外は暗い。

そのため気持ちまでもが暗くなっていた。

1人で泣き、そして泣き疲れて眠る。
そんな日々。
 

そしてやっと、転入手付きが終わり学校が始まった。

学校が始まり、れんくんたちのアドバイス通りにしたら少しずつ友達もできた。

そして友達と遊ぶようになってからはだんだん気持ちの整理もできて、夜も遊び疲れてすぐに眠れるように。

そのおかげで、夜に泣くことはだんだん減っていった。


一方、黒神組のみんなは·····