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そんな両親のもとで育った女の子は、もうすぐ10歳になるというのに学校にも行かせてもらえていなかった。
女の子はお昼の時間が1番好きだった。
お昼だけ唯一、1人で居られる時間。
朝は両親よりも早く起きないと
「なんであんただけ寝てんのよ」
「誰のおかげでここにいられると思ってんの」
と暴力を振るわれる。
夕方はいつ帰ってくるのかと、玄関のドアが、いつ開くのかと思うと気が休まらない。
夜は、両親2人とも仕事のストレスなどで暴言、暴力を振るわれる。
「こんな出来損ないのために何で私が働かなきゃいけないのよっ」
「あー、あのくそ上司もあんたも腹立つんだよ!」
と。
それに、外の音もお昼が一番いい。
朝になると、子供達の声が聞こえる。
学校に登校中であろう子供達の、賑やかな声が。
「今日の給食なんだろーなー」
「お前いっつもそればっかだな」
「ちょっと男子!止まらないでよ!」
などといつも外は騒がしい。
夕方になると、今度は下校中の子供達の声がする。
「今日の宿題なんだっけ?」
「漢字ドリルと、計算ドリル2ページずつでしょ」
「マジかよ」
「おっ、たかし!帰ったらゲームしようぜ!」
「おうっ!やろーぜ!」
「ちょっと宿題は?」
「後でー」
家の中が静かなだけあって外の音がよく聞こえる。聞きたくなくても。
みんなは楽しそうだな。と思っているのか、羨ましいな。と思っているのか。
お昼の時間は朝と昼に比べたら静かだ。
女の子はいつも一人、外の音を聞いていた。
それがもう、女の子にとっての日常。
女の子にとっての当たり前の日々だった───。