「出たらすぐ右に曲がって」
そう言ったのはスマホを見ている、白洲だった。
「心当たりあるのか?」そう黒神が聞く。
「実はね、何かあった時ようにももちゃんの髪飾りにGPSつけといたんだ」
少し申し訳なさそうな顔をしながら言う。
「なら最初から言え!」
「ごめん、僕も確認したのと同時に連絡あったから·····」
・
その頃桃子は·····
車の中で、どこかに向かっていた。
タオルで口を塞がれ手足は頑丈な紐で縛られていた。
数十分後、車から降ろされ、誰も寄り付かなさそうなビルの中へ連れて行かれた。
そして、3階の1番奥の部屋の中に入れられ、鍵を閉められた。この部屋には10人。
ここに来るまでには30人、いや、50人ほど怖そうな誘拐犯の仲間がいた。
もちろんこの部屋の外にも。
桃子はもう逃げれないと思った。
もうだめだ。今度こそ·····
「いい子にしてろよ、お前は大事な人質だからなぁ」
誘拐犯は桃子にそういった。
「止まった!」
スマホを見ながら誘導していた白洲がそう言ってみんなもあのビルに向かう。
・
いやだ。死にたくない。前まではいつ死んでもいいと思ってた。はやく解放されたかった。でも·····今は·····
みんなに出会ってから私の人生は変わった。
ずっと真っ暗なトンネルの中を彷徨って、もう歩くのにも疲れて、足を止めて、出口を探すのをやめてしまおうと思った。
そんな時、突然光が見えた。
小さな光、また足を動かして歩き出してみた。
だんだん光が大きくなって、もうすぐ出口に出られる!そう思った。それなのに急に出口を塞がれた。
でもすぐに、れんくん達が迎えにきて手を差し伸べて出口を教えてくれた。
それでやっと、真っ暗なトンネルから出られたのに·····。
やだ·····またあの暗闇に戻るのは。
誰か·····誰か·····れんくん、しーちゃん、みーや、あおちゃん·····みんな·····助けて·····
『──そんなちっせぇ体で全部背負い込むな。
人は1人じゃ生きていけねぇ。困ったことがあるなら言え。
助けて欲しい時は、大きな声で助けてって言え。
そしたら必ず、俺が助けに行ってやる──。』
「っ·····」
タオルで口を塞がれてたのを口で器用に動かし
「·····た·····ぇ、·····たす·····ぇ·····」
「あ?」
「·····たすけてっ·····たすけてみんなッッ!!」
(ドッッンッ!!)
突然大きな音が·····
「ッ、よく言えたなッ·····偉いぞ」
と言いながら黒神が現れた。
部屋の外に立っていた男を突き飛ばし、ドアを思いっきり蹴破ったのだ。
しかし突き飛ばされた男は後ろから殴りかかろうとした。
「ッ!」
それを器用にかわし逆に思いっきり殴った。
「ハッ、ももちゃんッ!」
「いたか!?」
「っもも!」