桃子が寝ている部屋のドアを少し開けてその隙間から、ちゃんと桃子が寝ているかを確認しに来た。
「ぅ〜っ·····ん·····」
「もも?」
うなされているのに気づき、青葉はすぐ部屋の中に入り、桃子が眠るベットに近寄る。
「んっ·····ぅ〜·····」
「大丈夫だ。俺がそばにいるから」
と起こさないようにそっと頭を撫でて、手を握ろうとした。
しかし桃子は自分の手をぎゅっと強く握り締めていた。
あまりにも強く握りしめていたのでその上から大きい大人の手をかぶせて親指の腹でよしよしするように動かして落ち着かせようとしていた。
するとだんだん手の力が緩まってきて、ゆびがはずれていった。
手をぎゅっと、爪が食い込むほど強く握りしめていたせいで、手のひらに爪の跡がついてしまっていた。
「大丈夫。そばにいるから」
桃子は悪夢を見るということはみんなに黙っていた。
そんな桃子に黒神が問う。
「もも、最近寝れねぇか?」
「そんな·····ことないよ?」
「今、楽しいか?」
「·····」
「誕生日の時にも言ったが、俺はももに楽しんでほしんだ。だから何か困ったことがあるなら言って欲しい。」
「·····っ」
「そんなちっせぇ体で全部背負い込むな。人は1人じゃ生きていけねぇ。困ったことがあるなら言え。助けて欲しい時は、大きな声で助けてって言え。そしたら必ず、俺が助けに行ってやるから。」
「·····最近·····夢を見るの。あの時一緒に閉じ込められてた女の子の夢を。」
「っそうか·····」
「私だけ助かったから、怒ってる。まだ私よりも小さかったのに。家族に·····会いたがってた。·····えみちゃんは1人じゃなかった。私は幸せになっちゃダメ。」
「俺は、その子がもものことを生かしてくれたんだと思うぞ。」
「え·····?」
「その子の分まで、ももが幸せになればいい。
ももは幸せになっちゃいけなくなんかない。
幸せになっていい。笑っていい。泣いていい。怒っていい。わがまま言っていい。
それで俺たちもその子も怒ったりしない。
むしろ嬉しいから。」