次の日·····
桃子は赤宮と一緒に大きめの病院に来ていた。
後ろには護衛の部下も。
桃子は病院を怖がったり、嫌がったりはしなかった。
あんな経験をしといて今更病院程度では怖がらないか。
極道、しかも虐待を受けていた子供を病院に連れて行くと色々めんどくさいので、桃子の親戚と名乗って虐待から逃げていると言って病院の検査を受けた。
怪我の手当や、年齢に比べて身長体重がないことの健康面での検査などをしてもらった。
それと、喋らないことについて。
喋“らない”だけなのか、喋“れない”のか。
診察と検査をした後、桃子は待合室で護衛の部下と一緒に話が終わるのを待っていた。
医者との話は赤宮一人で聞いている。
「桃子さんですが、怪我はかなり古いものもあったので、おそらくかなり前から·····もしかしたら、まだ産まれたばかりの赤ちゃんの時から、虐待されていたと思われます」
「·····っ、」
「それから、身長体重も同年代の子達よりも低いしかなり軽いですが、栄養をあるものを食べれば時期良くなるでしょう。今までは十分に食べれていなかったのでしょうね」
「そして·····しゃべらないという件ですが、検査では異常がなかったのでおそらく、精神的なものだと思われます。耳が聞こえていないわけでも、声が出せない訳でもないので、そのうち話せるようになるでしょう。時間はかかるかもしれませんが·····」
「そうすか·····」
「決して無理に声を出させようとしないでください。桃子さんは───·····」
病院の帰り、気分転換に少し歩くか、と言って桃子と赤宮は手を繋ぎながらぶらぶらと歩く。
赤宮は近くにあった看板を見て、「ももちゃん、あそこのパフェ食べに行かない?」と桃子をパフェに誘った。
赤宮は少しでも桃子に笑顔になって欲しいと思った。
それは、先ほど医者から言われた言葉が頭の中で何回も復唱され、グルグルと頭をかき乱し、離れなかった·····。
『───桃子さんは、かなりのストレスを抱えていたのでしょう。
もしかすると親御さんから声を出すなと言われていた可能性もあります。
喋るな、口答えするなとか。
生まれた時からとなるとそれが当たり前だった·····。
黙ることで、自分が我慢することで解決するならそうしよう。
でも、そう頭では思っていても、心がダメージを受けていた。
それでも、助けてと言えない。
いや、助けの求め方がわからない。
声の出し方がわからない。
なので、他の子と違う行動をとることもあるでしょう。
今までと違う環境で混乱することもあるでしょう。
しかしこれからは、あなたが、桃子さんに感情を、言葉を、助け方を、教えてあげてください』
その言葉が頭から離れなかった。
少しでも早く元気に、笑顔になって欲しい。と赤宮は思った。
赤宮からのパフェの誘いを受け、桃子は頷く。
「よし!じゃあ行こぉ⤴︎」
赤宮は桃子に心配させないように笑顔でテンションを上げて言う。
それでも桃子には分かってしまうと、分かっていても。
桃子は親の顔色を伺いながら、なるべく怒らせないように生きていたせいか、桃子は人の顔色を見て行動することが多かったのだ。