桃子がきてから数日が経った。
みんなは薄々気がついていたが、あまり言わないようにしていたことがある。
それは·····
「ももちゃん喋った?」
「いや·····」
赤宮と青葉は桃子がなかなか喋ってくれないことを気にしていた。
「どうだ?」
「まだみたいだね」
黒神と白洲もまた、同じように心配していた。
そう、桃子はここに来て一度も、一言たりとも声を出していないのだ。
最初はただ初めて会った人や場所に、警戒、緊張しているのだと思っていたのだが·····
二週間ほど経った今もなお、桃子の声を聞いたものは誰もいない。
まだ警戒しているのか?
いや、そんなことはない·····はず。
最初からあまり警戒している様子もなかったし、怖がっている様子も見せなかった。
それに初めて会った日よりかはかなり打ち解けた。
とメンバー達は思っている。
実際、桃子自身もまだ若干表情は固いものの、最初の頃に比べたらかなり表情を変えるようになったし、自分からメンバーのもとへ近づくこともあった。
だから行動や仕草では会話をしていた。
それで今までは伝わっていたのだが、いつまでもこのままではいけないとも思っている。
どうして声を出して、会話をしてくれないのか·····。
一度病院に行って、検査をしてもらった方がいいのかもしれない。
もしかしたら他に何か原因があるのかもしれない。
そう思った黒神達は病院に連れて行くことにした。