少し離れたところからそう聞こえた。
今度は足音が聞こえてくる。
何か慌てているような、普通に歩いている足音ではなく、不規則に一つ一つ檻の中を確認しているようなそんな足音。
それがどんどんこちらに近づいてくる。
「·····っ!まだ生きている子供がいる!」
倒れていた男からそう叫んだ人物にゆっくり目線を移す。
そう叫んだのは赤髪の男だった。
そして、黒髪で背の高いお兄さんもいつの間にか立っていた。
その後から青髪の男と、白髪の男も入ってきた。
その男達は、それぞれの髪色に合わせたスーツを着ていた。
自信に満ち溢れた感じに。
部屋は薄暗いはずなのにこの男達はとても眩しかった。
「きみ名前は?」
赤髪の男は鉄格子に手をかけながら、女の子に目線を合わせるようにしゃがんで女の子の名前を聞いた。
女の子は少し黙った後、えみちゃんの時と同じようにゆっくり指で「(1、1、3)」と表した。
赤髪の男はその行動に少し驚いて「っ·····ぇ·····そうじゃなくて、本当の名前」と再度優しく聞いた。
が、女の子は首を傾げた。
その様子を見て、青髪の男が何かを探しに行った。
そしてすぐに、「あったぞ!」とそう言って青髪の男がどこからか持ってきたファイルを手にして戻ってきた。
そのファイルの中には、ここにいた子供達の個人情報などが書かれた書類が入ってあった。
ファイルを青髪の男から赤髪の男へ渡され、
「七瀬桃子(ななせ ももこ)·····」
その書類に書いてあった名前を赤髪の男が読んだ。
しかし女の子、桃子はまた首を傾げる。
「とりあえずここから出たほうが·····」
そう言いながら青髪の男は、先ほど書類と一緒に持ってきた檻の鍵を使って桃子が閉じ込められている檻の鍵を開けた。
しかし横で倒れているどんどん冷たくなっていくえみちゃんを見て、桃子はなかなかその檻から出てこようとしなかった。
「ごめんな、俺たちがもっと早く来ていれば·····」
といって赤髪の男が桃子の手を引いて、檻の外に出してあげた。
そして他の子供達の姿を見せないようにと、ずっと黙って様子を見ていた黒髪の男が桃子を抱きかかえた。
そのまさかの行動に、周りの3人は目を見開いてびっくりしていた。
「え···」
しかしどんどん歩き進める黒髪の男を3人は急いで追い、周りをなるべく見せないようにと赤髪の男は女の子の視界に立った。
建物から出ると外は日が落ち始めていた。
小1時間程、車を走らせて男たちのアジトらしきところに着いた。
外観は普通のビルに対して、中はものすごく厳重になっていた。
中には見張りの人が何人も立っていた。
上の階に行くにつれ、どんどん厳重に。
見張りの人も強そうな体型をしている。
そして、男達の名前を教えてくれた。
女の子を抱き抱えた黒髪の男は、黒神 蓮(くろがみ れん)。
黒いスーツ。
ベストまで全て黒で統一してある。
ジャケットにはスーツの襟に挿すアクセサリー、ラペルピンがつけてある。
それは黒神組の幹部だけがつけれる襟章。
とてもシンプルで、色はもちろん黒く、目立つように縁だけシルバーで、形は丸い。
そしてその中には何か"花の紋章"が描かれている。
その花の種類は·····何だろうか。
桜でもなく、バラでもない。
白髪の男は、白洲 零(しらす れい)。
白いスーツに白いベスト。
ただ黒の面積も多い。
中に着ているワイシャツは黒い。
ベストのボタンもジャケットのボタンもポケットチーフも黒。
そして黒神と同じ、ラペルピン。
だが、チェーンがついていて、チェーンプローチになっている。
アクセサリーが多めで、ベルトや、腕にしているもの、指にしているアクセサリーは全てシルバーで統一してある。
そして桃子を檻の中から出してあげた赤髪の男は、赤宮 幸助(あかみや こうすけ)。
紫やワインレッドに近い赤色のスーツを着ている。
赤宮も同じくワイシャツ、ボタンは黒。
ワイシャツの襟にはカラーピン、襟と襟にシルバーのチェーンが繋がっている。
こちらも同じく、黒神と同じラペルピンもつけている。
そして最後、青髪の男は、青葉 健人(あおば けんと)。
青い色のチェック柄のスーツ。
特にアクセサリーなどはしていない。
とてもシンプル。
そして同じく紋章のついたラペルピン。
みんなモデルかのように似合っている。それぞれの個性が服装でわかる。
取り敢えず、この4人は覚えておけと。
そう桃子に説明した。
そして部下に怪我などの治療を頼み、黒神たちは桃子について話をしていた。