中学二年生の春。私は友達の女の子に恋をした。
私の名前は小夜。そして、私の好きな人の名前は穂華。私達が出会ったのは中学一年生の春、宿泊学習で初めて私達は出会った。
最初はただの友達だった。けれど、日を重ねていくにつれ彼女に惹かれていった。
女の子らしい身長、体型、声、顔、性格。彼女の全てが愛おしく感じた。もっと彼女のそばに居たい!そう思ったけれど、私にはとある問題があった。
私は起立性調節障害という病気を持っており、午前中からの登校ができないのに加え精神的にも追い詰められ別室登校となった。
毎日毎日教室に戻ろうとしても、やはり怖くて前に進めない。あの子に会いたくても私の重い足は中々動かなかった。でも、あの子がいるから私は自己否定の日々に絶えられた。そんなある日、私は学年集会があるからと先生に呼ばれ教室に来ていた。教室のドアの前で少し立ち止まる。
みんなから嫌な目で見られたらどうしよう。暴言を吐かれたりいじめられたらどうしよう。そんな考えが頭の中を巡った。でも、あの子は、あの子だけは信じられた。だから私はやっと重い一歩を踏み出せた。
私が教室へ入ると、みんな私を奇異の目で見てくる。その目線だけで泣き出しそうだった私を、彼女が救ってくれた。
「小夜ちゃん!久しぶり!」
と穂華ちゃんが私を抱きしめてくれた。その抱擁が恋愛感情無しでも、とても暖かくて嬉しかった。
その日、私は穂華ちゃんと一緒に帰った。何気ない会話をして、何気ない事で笑い合う。そんな何気ない出来事は私にとってはとても素晴らしい事だった。
二年生の夏。私は行動する事に決めた。彼女に好かれる為に。
私は肩の下まで伸びていた髪を耳が見えるまでバッサリと切り落とした。あの子に振り向いてもらう為に。ダイエットも始めた。あの子に好きになってもらう為に...
制服もスカートからズボンに変えた。穂華ちゃんは見違えた私にびっくりしていたけど、優しく微笑んで「とても似合っているよ!」と言ってくれた。
凄く嬉しかった。私はもっとあの子に相応しい人間になりたい。その為に無頓着だったオシャレにも気を使うようになった。たまに連絡を取り、一緒に話して、教室に戻れた日は一緒に帰って...あの子は私に嫌な顔ひとつも見せずにいつも笑顔だった。でも、私を脅かす存在が現れた。
私と穂華の共通の友人の宮野君。いつも気だるそうにしていて頭が良い男の子。穂華ちゃんの話を聞いていると私が居ないときはいつも二人で帰っているらしい。それだけなら私も特に何も感じなかったけど、それに加え穂華ちゃんの会話に彼の話が多くなったと感じた。
確かに二人は仲がいいけれど...まさかそんなことはないよね...と私は自分に言い聞かせていた。
とある日の夜、私は宮野君に連絡を送っていた。勿論穂華ちゃんについてだ。
あの子のことどう思ってるの?と私は送った。彼は「妹みたいで可愛いとは思ってる」と返ってきた。私は一瞬思考が止まった。
このままだともしかして二人が付き合っちゃうんじゃないか?そうなったら私はどうすれば...?と焦りでいっぱいになった。
このままじゃダメだ。私は威嚇の意味を含んで彼にこう送った。「私、穂華ちゃんのこと好きなんだよね」
彼のメッセージは少し止まったけれど、すぐに返ってきた。
「そうなんだ。応援してる」とだけ残して彼とのメッセージは終わった。
次の日の夜。彼に恋愛相談をしてみた。意外にも彼は話に乗ってくれた。彼女についても色々教えてくれた。不思議に思った私は彼に聞いた。
「穂華ちゃんのこと好きじゃないの?」
「別に。今は恋愛とか興味ない」
私は安堵した。だけど、穂華ちゃんには勿論彼以外の男友達も居る。それに警戒すべきは男だけじゃない...女の子にも警戒しなければならない。
私はやっと、やっとあの子に想いを伝えることにした。
二年生の冬。私は穂華ちゃんに「カラオケ行かない?」と遊びに誘った。穂華ちゃんは二つ返事でOKしてくれた。
私はすぐに家で歌の練習を始めた。ビブラートや声の出し方を試行錯誤し、なんとか聞けるくらいにはしたい!と思い毎日歌った。
そしてついに当日。私はこの日の為に買った服を着て、メイクもバッチリにして待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に着くともう穂華ちゃんは待っており、私は急いで自転車を駐輪場に止めて走った。
「ごめん!待った?」
「ううん!大丈夫!」
私達は世間話をしながら予約していた部屋へ向かった。
二人でドリンクバーに飲み物を取りに行き、穂華ちゃんが先に歌い出す。
穂華ちゃんの歌はとても上手で、プロと言っても過言ではない歌声で私は圧巻された。私も最近流行りの歌を歌ったり、デュエットしたりで全力で楽しんだ。
歌い疲れて休憩しているときに、私は”とあるもの”を取り出した。
「これ...プレゼント」
「え!?本当!ありがとう!中身見てもいい?」
「勿論!」
穂華ちゃんは凄い勢いで袋を開ける。
「これ、キーホルダー?」
「そうだよ。この前家族で出掛けたときのお土産」
「やったー!嬉しい!ありがとう!」
私は彼女にハート付きのパンダのキーホルダーをプレゼントした。気に入ってくれるかとても不安だったけれど、穂華ちゃんはすぐにスマホカバーにキーホルダーを着けてくれた。
私はそのまま恋愛ソングを歌い、気分は上々。ついにあのことを聞くことにした。
「穂華ちゃんってさ、好きな人いるの?」
穂華ちゃんは少し渋い顔をした。
「えーっとね.....実は、私ね、」
「彼氏居るの」
私は絶望した。私の中で何かが壊れる音がした。今まで何度も失恋してきたけれど、初めての感覚だった。私は誰の目から見ても不自然なくらい動揺した。
「あと、彼氏って言ったけど実は、女の子なの」
私の心は今まで以上に傷ついた。穂華ちゃんに恋人の写真を見せてもらったが、私と同じようにボーイッシュな格好をした女の子だった。私はトイレに行き、泣きはしなかったが宮野君に失恋したという連絡を送った。悔しくて悔しくてたまらなかった。
その後話を聞いてみると、恋人とは遠距離恋愛のようで滅多に会わないしさらに束縛が激しいらしいので別れようかと考えているようだ。私はこの上ないチャンスだ!と思ったが、何故かこのままアタックするのも気が引けてしまった。このままあの子に告白してOKをもらったら?一人の人を不幸にするんじゃないか?でも私の想いはそんなものだったのか?残りの時間はずっと自問自答ばかりしてしまった。
私は穂華ちゃんを家まで送ることにした。そしてさり気なく私は恋愛相談をした
「実はね、好きな人がいるんだけどもう別の人と付き合っててさ〜、どうしたらいいと思う?」
と所々濁して伝えた。穂華ちゃんは少し考え込んで、
「なら奪っちゃえば?」
と明るい声で言った。
私はこの子が軽々しくそんなことを言うことにかなりびっくりしたが、その場は「いや〜それは無理だよ〜w」と答えたが、正直穂華ちゃんの黒いところにもまた惹かれてしまった。
そんな衝撃的な日から数日後。どうやら本当に恋人と別れたらしい。私はその場は平然と過ごしたが、心の中ではガッツポーズを決めていた。すぐにでも告白したいところだが、私達は年が明ければついに三年生。受験生なのだ。
私は行きたい高校があるので勿論猛勉強する。そんなところに恋愛が入ればなんとなく私の性格だとずっと恋人に連絡しそうだなぁという気持ちと、少し考える時間が欲しかったので告白はお預けすることになった。
今でも私は彼女の事を想っている。この気持ちは嘘ではない。だからこそ、中学生じゃなくなる日…卒業式の日に私は後悔のないようにする。
今は言えやしないこの気持ちを、来年あの子に伝える。その為に私は勉強や他のことにも努力し続ける。例え貴方に好かれていなくても。
好きだと言うまで後一年。私は貴方を想い続ける。
私の名前は小夜。そして、私の好きな人の名前は穂華。私達が出会ったのは中学一年生の春、宿泊学習で初めて私達は出会った。
最初はただの友達だった。けれど、日を重ねていくにつれ彼女に惹かれていった。
女の子らしい身長、体型、声、顔、性格。彼女の全てが愛おしく感じた。もっと彼女のそばに居たい!そう思ったけれど、私にはとある問題があった。
私は起立性調節障害という病気を持っており、午前中からの登校ができないのに加え精神的にも追い詰められ別室登校となった。
毎日毎日教室に戻ろうとしても、やはり怖くて前に進めない。あの子に会いたくても私の重い足は中々動かなかった。でも、あの子がいるから私は自己否定の日々に絶えられた。そんなある日、私は学年集会があるからと先生に呼ばれ教室に来ていた。教室のドアの前で少し立ち止まる。
みんなから嫌な目で見られたらどうしよう。暴言を吐かれたりいじめられたらどうしよう。そんな考えが頭の中を巡った。でも、あの子は、あの子だけは信じられた。だから私はやっと重い一歩を踏み出せた。
私が教室へ入ると、みんな私を奇異の目で見てくる。その目線だけで泣き出しそうだった私を、彼女が救ってくれた。
「小夜ちゃん!久しぶり!」
と穂華ちゃんが私を抱きしめてくれた。その抱擁が恋愛感情無しでも、とても暖かくて嬉しかった。
その日、私は穂華ちゃんと一緒に帰った。何気ない会話をして、何気ない事で笑い合う。そんな何気ない出来事は私にとってはとても素晴らしい事だった。
二年生の夏。私は行動する事に決めた。彼女に好かれる為に。
私は肩の下まで伸びていた髪を耳が見えるまでバッサリと切り落とした。あの子に振り向いてもらう為に。ダイエットも始めた。あの子に好きになってもらう為に...
制服もスカートからズボンに変えた。穂華ちゃんは見違えた私にびっくりしていたけど、優しく微笑んで「とても似合っているよ!」と言ってくれた。
凄く嬉しかった。私はもっとあの子に相応しい人間になりたい。その為に無頓着だったオシャレにも気を使うようになった。たまに連絡を取り、一緒に話して、教室に戻れた日は一緒に帰って...あの子は私に嫌な顔ひとつも見せずにいつも笑顔だった。でも、私を脅かす存在が現れた。
私と穂華の共通の友人の宮野君。いつも気だるそうにしていて頭が良い男の子。穂華ちゃんの話を聞いていると私が居ないときはいつも二人で帰っているらしい。それだけなら私も特に何も感じなかったけど、それに加え穂華ちゃんの会話に彼の話が多くなったと感じた。
確かに二人は仲がいいけれど...まさかそんなことはないよね...と私は自分に言い聞かせていた。
とある日の夜、私は宮野君に連絡を送っていた。勿論穂華ちゃんについてだ。
あの子のことどう思ってるの?と私は送った。彼は「妹みたいで可愛いとは思ってる」と返ってきた。私は一瞬思考が止まった。
このままだともしかして二人が付き合っちゃうんじゃないか?そうなったら私はどうすれば...?と焦りでいっぱいになった。
このままじゃダメだ。私は威嚇の意味を含んで彼にこう送った。「私、穂華ちゃんのこと好きなんだよね」
彼のメッセージは少し止まったけれど、すぐに返ってきた。
「そうなんだ。応援してる」とだけ残して彼とのメッセージは終わった。
次の日の夜。彼に恋愛相談をしてみた。意外にも彼は話に乗ってくれた。彼女についても色々教えてくれた。不思議に思った私は彼に聞いた。
「穂華ちゃんのこと好きじゃないの?」
「別に。今は恋愛とか興味ない」
私は安堵した。だけど、穂華ちゃんには勿論彼以外の男友達も居る。それに警戒すべきは男だけじゃない...女の子にも警戒しなければならない。
私はやっと、やっとあの子に想いを伝えることにした。
二年生の冬。私は穂華ちゃんに「カラオケ行かない?」と遊びに誘った。穂華ちゃんは二つ返事でOKしてくれた。
私はすぐに家で歌の練習を始めた。ビブラートや声の出し方を試行錯誤し、なんとか聞けるくらいにはしたい!と思い毎日歌った。
そしてついに当日。私はこの日の為に買った服を着て、メイクもバッチリにして待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に着くともう穂華ちゃんは待っており、私は急いで自転車を駐輪場に止めて走った。
「ごめん!待った?」
「ううん!大丈夫!」
私達は世間話をしながら予約していた部屋へ向かった。
二人でドリンクバーに飲み物を取りに行き、穂華ちゃんが先に歌い出す。
穂華ちゃんの歌はとても上手で、プロと言っても過言ではない歌声で私は圧巻された。私も最近流行りの歌を歌ったり、デュエットしたりで全力で楽しんだ。
歌い疲れて休憩しているときに、私は”とあるもの”を取り出した。
「これ...プレゼント」
「え!?本当!ありがとう!中身見てもいい?」
「勿論!」
穂華ちゃんは凄い勢いで袋を開ける。
「これ、キーホルダー?」
「そうだよ。この前家族で出掛けたときのお土産」
「やったー!嬉しい!ありがとう!」
私は彼女にハート付きのパンダのキーホルダーをプレゼントした。気に入ってくれるかとても不安だったけれど、穂華ちゃんはすぐにスマホカバーにキーホルダーを着けてくれた。
私はそのまま恋愛ソングを歌い、気分は上々。ついにあのことを聞くことにした。
「穂華ちゃんってさ、好きな人いるの?」
穂華ちゃんは少し渋い顔をした。
「えーっとね.....実は、私ね、」
「彼氏居るの」
私は絶望した。私の中で何かが壊れる音がした。今まで何度も失恋してきたけれど、初めての感覚だった。私は誰の目から見ても不自然なくらい動揺した。
「あと、彼氏って言ったけど実は、女の子なの」
私の心は今まで以上に傷ついた。穂華ちゃんに恋人の写真を見せてもらったが、私と同じようにボーイッシュな格好をした女の子だった。私はトイレに行き、泣きはしなかったが宮野君に失恋したという連絡を送った。悔しくて悔しくてたまらなかった。
その後話を聞いてみると、恋人とは遠距離恋愛のようで滅多に会わないしさらに束縛が激しいらしいので別れようかと考えているようだ。私はこの上ないチャンスだ!と思ったが、何故かこのままアタックするのも気が引けてしまった。このままあの子に告白してOKをもらったら?一人の人を不幸にするんじゃないか?でも私の想いはそんなものだったのか?残りの時間はずっと自問自答ばかりしてしまった。
私は穂華ちゃんを家まで送ることにした。そしてさり気なく私は恋愛相談をした
「実はね、好きな人がいるんだけどもう別の人と付き合っててさ〜、どうしたらいいと思う?」
と所々濁して伝えた。穂華ちゃんは少し考え込んで、
「なら奪っちゃえば?」
と明るい声で言った。
私はこの子が軽々しくそんなことを言うことにかなりびっくりしたが、その場は「いや〜それは無理だよ〜w」と答えたが、正直穂華ちゃんの黒いところにもまた惹かれてしまった。
そんな衝撃的な日から数日後。どうやら本当に恋人と別れたらしい。私はその場は平然と過ごしたが、心の中ではガッツポーズを決めていた。すぐにでも告白したいところだが、私達は年が明ければついに三年生。受験生なのだ。
私は行きたい高校があるので勿論猛勉強する。そんなところに恋愛が入ればなんとなく私の性格だとずっと恋人に連絡しそうだなぁという気持ちと、少し考える時間が欲しかったので告白はお預けすることになった。
今でも私は彼女の事を想っている。この気持ちは嘘ではない。だからこそ、中学生じゃなくなる日…卒業式の日に私は後悔のないようにする。
今は言えやしないこの気持ちを、来年あの子に伝える。その為に私は勉強や他のことにも努力し続ける。例え貴方に好かれていなくても。
好きだと言うまで後一年。私は貴方を想い続ける。